オトナになったV4。

違和感がないか,と言われれば,なかなか否定は難しいですね。


 もちろん,最初期モデルを思えばツアラーへ軸足を移す,というのは「正常進化」とも言えるような気はします。しますが,プロアームが採用されたあたりの印象が最も強烈なためか,ツアラー,と言うよりはスポーツという位置付けが付きまとうわけです。そのために,どうも認識にズレを生じてしまうのですが,インライン4を搭載していた“スーパー・ブラックバード”の後継車種がV4を搭載した,と考えるべきなのかも知れません。



 ホンダのプレス・リリースをもとにしつつ,VFR1200Fについて書いていこう,と思います。


 まずは,なかなかに個性的なスタイリングであります。端正なフロント,という表現は適当ではないかも知れません。個性をしっかりと主張するようなライト・ハウジングだな,という感じであります。ただ同時に,「上質」な印象も与えるものです。リリースでも指摘されていますが,カウルの継ぎ目を巧みに処理していることがオフィシャル・フォトからもうかがえますし,フラッシュ・サーフェイス処理を施すことで空力特性を向上させているだろうことが確かに感じられます。


 排気系を見ると,いわゆる“ダウン・スラング”であります。国内規制は国際的に見ても最も厳しい規制であり,高い消音性能とともに排気ガス浄化性能が求められます。触媒やサイレンサーを効率的に配置する,となると,前方と後方,2個所に排気系を設ける必要があるV4では取り回しが難しくなるだろうアップスタイルは厳しいでしょう。アップとダウンを併用する,という考え方もありましょうが,パワーを徹底的に追い求めるのではない限り排気系を分離するメリットよりも,ある程度チャンバー容積を稼げるだろう集合方式がいいでしょう。で,「理」の側面から見れば,恐らくはこんな感じでしょう。
 ただ,個人的にはダウン・スラングマフラーから透けているホイールに,「血統」を感じます。そして,開発スタッフはどこかで,プロ・アームを「見せる」演出を考えてもいただろうな,と思うのです。そのときのアクセントが,個性的な造形のマフラーではないかな,と思うわけです。


 VFRといえば,のプロ・アームであります。


 400ccで最初にプロ・アームが採用されたときは,マフラーが見事にプロ・アームを隠してしまう形になってしまっていて,いささかがっかりしたこともありましたが,今回の見え方は悪くない。そして,特徴的なのが,シャフト・ドライブを採用していながらプロ・アームにしていること,であります。どんな操縦性を感じさせてくれるのか,興味あるところです。
 加えて,排気量が1200ccへと拡大されました。「とある公的機関」に納入されたバイク(リアビュー・ミラーにその姿を認めると,何もしていないに何となくドキッとする,例のバイクですな。)を含めて,800ccあたりの排気量だったのですが,今回は400cc引き上げられることになります。もともと,独特の回転フィールを持った4気筒でありますが,物理的にトルクを増したエンジンでありますから,確かにツアラー適性は高そうです。


 なかなかにオトナな価格でありますが,魅力あるバイクの国内投入でありますし,歓迎したいものであります。