ナビスコカップ初戦を前に。

距離を詰めたことがあっても,手に届かなかったもの。


 2002シーズンが始まるまでは,どこかにそんな意識が付きまとっていました。高みに意識を向けるよりも,下との距離を意識してしまう。そんな意識が,明確に変わったのが2002シーズンだったように思いますし,クラブがいままでとは違う歩みをはじめた,ということを実感として感じられた,その大きなきっかけであるトーナメントだな,という思いを持っています。


 ヤマザキナビスコカップであります。


 浦和というクラブが,リーディング・クラブへの階段を上がりはじめる,そのきっかけとなったトーナメント,であります。思えば,2004シーズン以降のファースト・チーム,そのフレームワークとしても機能することになる基礎構造を構築しはじめたのは,2002シーズンのことであります。その基礎工事の方向性が間違っていなかった,という大きな裏付け,そしてさらなる飛躍に向けた重要な足掛かりが,国立霞ヶ丘で掲げることのできたカップだったのだろう,と思うわけです。
 この時期と,今という時期をまったく同じに見る必要性はないでしょう。けれど,「基礎工事の方向性が間違っていない,という大きな裏付け」という要素においては,2003シーズンといまにはどこか,相似する部分を感じたりもするのです。


 相似する,という意味では,2006シーズンの天皇杯にもどこか,相似する要素を感じます。


 2006シーズンにおけるファースト・プライオリティは,「タイトル奪取」でありました。ファースト・チームはタイトル奪取,という方向性でバインドされていた,という印象もあるわけですが,タイトル奪取に直接関わってはいない,という感触を持つフットボーラーもいたわけです。彼らにとって,タイトル奪取,という感覚を直接に実感できる機会は天皇杯以外に残されていなかった。クラブとしての飢餓感,というよりも,ひとりひとりのフットボーラー,彼らの持つ飢餓感が重なり合うように,カップ戦を駆け抜ける加速力になったのかも,という印象を持っているわけです。
 このときとどこか近い,「飢餓感」があるのではないか,と思うのです。


 サテライト・リーグは2009シーズンをもって終了していますし,リーグ戦でスターターとなっていない選手にとっては,重要な実戦の舞台である,と言えるでしょう。昨季,スターターとしてピッチに立っていた選手が,今季もスターターとしてリストされているわけではありません。昨季途中で,スターターから外れたフットボーラーもいます。リーグ戦でスターターの立場をつかんでいない,あるいはリザーブとしてのリストに入らなかったフットボーラーにとっては,再びリーグ戦での出場機会をうかがう,そして当然,スターターとして割って入ることを意識しているはずでしょうし,そのモチベーションをファースト・ラウンド通過,そして最終的にはタイトル奪取,という部分に結び付けてほしい,と思います。