対FC東京戦(10−02)。

ショートハンドは,必ずしも優位性をもたらすものではない。


 ショートハンドに追い込んだことで,かえって攻撃面や守備面で構築してきたリズムが微妙にずれていく。対して,ショートハンドに陥った相手にとって「やるべきこと」が明確になる,とも言える。守備ブロックへの影響を最小限に抑えながら,シンプルに逆襲を狙っていく。ボール奪取位置が10−10の状態から動いていることに対して,的確な調整が施せないと,結果として相手のリズムに乗せられることにもなりかねない。


 どうも,そんな図式に嵌り込んだような印象であります。


 まだ,相手の状態に合わせたフットボール,というよりも,自分たちが狙うフットボールを煮詰めていくことの方が優先される状態でありましょうし,10スペックなフットボールという意味では,しっかりと表現できる時間帯が増えてきている,というのも確かでありましょう。「勝ち点3」という手掛かりを得たことも含めて,決して悪いことばかりではない,と思います。


 まいど1日遅れ,のFC東京戦であります。


 実質的なパッケージを見ると,開幕節と同じであるようです。いわゆる,“4−2−3−1”でありますが,今節においては“3−1”の距離感がしっかりと修正されてきたな,と感じるところです。トップとの距離感がいささか遠く,ポストにパスを繰り出しても,ポストからのリターンを的確に引き出せる距離が保てなかった,という図式だったのが開幕節であるとすれば,今節は縦の距離感だけでなく,横方向での距離感も悪くない時間帯が増えてきているな,という印象であります。
 そして,縦方向の大きな流動性も見えてきている,というのが収穫でありましょうか。SBとアタッキング・ミッドフィールド,という関係性だけでなくて,アタッキング・ミッドフィールドとセントラル・ミッドフィールド,そしてCBを含めたポジションの循環が,攻撃面で機能する時間帯が出てきている,という印象を持ちました。


 戦術面での共通理解が,実戦で表現できてきている。


 今節における最大の収穫は,恐らくこのあたりではないかな,と感じます。


 逆に課題となるのは,冒頭にも書きましたが相手のショートハンドを自分たちの戦術面に取り込めなかったこと,逆に相手のゲーム・プランに嵌り込んでしまったこと,になるでしょう。
 大ざっぱな言い方をすれば,チームのバランスが崩れてしまったように映ります。どのようにしてボール・ホルダーに対してアプローチしていくのか,であったり,ボール・ホルダーへのプレッシャーがボール奪取を狙うものなのか,それともコースを切りに行くものなのか,という部分などで「中途半端さ」を見せるようになっていたように感じます。獲りに行く,という意識が強くなりすぎていたり,逆に追い込むとしてもその追い込み方がルーズになってしまったり。結果として,そのズレがチームに対して影響を与えてしまったのではないかな,と感じるわけです。さらに,チームの「縦」が伸びていってしまったようにも感じます。攻撃ユニットがイメージする戦い方と,守備ブロックの戦い方とに違いを生じてしまったように見えるわけです。そして,押し込まれたときのラインが,4というフォーマットからは離れている時間帯が出てきてしまった。セントラルがバランスを取って下がってくる,という局面が多かったか,とは思いますが,実際にライン・ディフェンスが4よりも多い,という形になってしまった。ミッドフィールドでのコントロールがなかなか効かなくなってきていた,ということでもありましょうし,相手はミッドフィールドでのボール争奪という要素を省略,シンプルに攻撃を構築しよう,という形にシフトした,ということも関わってきているでしょう。
 さらには,ビルドアップのタイミングでの,“アンフォースト・エラー”がもったいない,という印象も持っています。余裕を持ってコントロールできるはずのエリアで,ビルドアップのごく初期段階のパスが相手へのプレゼント・パスになってしまう,という局面がありましたし,パス,という側面から見るならば,もうちょっとパス・レンジが広がっていくと攻撃面での幅が広がるような印象を持っています。


 いい流れの時間帯を,どれだけ長くすることができるか。


 09シーズンにあっても,同じ課題が序盤にあったと感じます。立ち上がりからしっかりとリズムを奪いにいく,という姿勢は今季開幕節の段階でも見えていますが,自分たちのミス,積極的なチャレンジの結果としてのミスではなく,的確に組み立てるべき時間帯,その初期段階でのミスでリズムを手放してしまった時間帯が生じてしまう,というのはあまりにもったいない。この部分はしっかりとした修正を,と思います。


 ・・・いつの間にか,収穫よりも課題に話がシフトしてしまいましたが。


 ともかくも,1−0というファイナル・スコアから受ける印象よりは,戦術的な熟成をさらに進めていくにあたって得るものが少なくないゲームだったのではないか,とは思うところです。