日産の「隠れた名品」。

SUV化に乗り遅れた,という言い方もできるでしょう。


 ランクルの進化を思えば,その印象はさらに強いものがあります。


 ランクルは60から80へと進化したときに,ハッキリとSUVへと軸足を移しました。クロカン的な香りを比較的強く残していた70系も,プラドという名前が付く頃にはSUVという方向性を意識するようになりましたし。


 対して,同時期のサファリはかなり「道具」感が強かった。オフロードでは車幅感覚をつかむ武器になるスクエアなデザインに,電動ウィンチ(確か,ウォーン社製が用意されていたはずです。)が搭載されて,はじめてデザインが完結しているかのようなフロント・フェイスを持っていました。また,見えないところではオンロード性能,ではなくオフロードでの走破性を重視して,リジッド・サスペンションにこだわった設計を続けてもいました。そのためか,白いボディで有名な国際機関も,サファリ(パトロール)をディフェンダーと並んで使っていた,という記憶があります。


 日本市場ではすでにディスコンとなってしまったクルマですが,すごく良くできたクルマ,そのひとつだと,いまでも思っています。


 今回はフットボールを離れ,さらにはスピードスケートからも離れて(おめでとうございます。近く書いてみようと思っております),webCGさんのニュース記事をもとに,新型“パトロール”の話を書いてみよう,と思います。


 まず最初に思ったのは,「ついに(と言うか,やっと!と言うか)」SUV的な快適性だったり上質性を手に入れたか,ということです。クロカンとしての性能に疑いは持たなかったし,個人的には「道具」としての素っ気なさに好感を持っていましたが,同時にライバル車を冷静に眺めれば,商品性が低く見られてしまうだろう,という思いは持っていました。実際,その思いは現実のものとなってしまって,国内市場からは姿を消してしまうわけですけれど,今回のオフィシャル・フォトをCGさん経由で見てみれば,なかなかに良いクルマに仕上がっているではないか,と思います。全体的にスクエアな印象は変わらないけれど,面構成などがしっかりと現代化されています。インテリアに至っては,「別物ですか?」と聞いてしまいたくなるほどにモダナイズされたな,と。


 エンジンに関しては触れられていないので,ちょっと推理を織り交ぜるならば,恐らくクリーン・ディーゼルメルセデス的な言い方をすれば,ブルーテック型のクリーン・ディーゼル)を採用しているものと思います。ディーゼルに対する国内規制は相当に厳しく,欧州市場での規制をクリアしている車種であってもなかなか日本導入が難しいようです。


 という事情は理解しているつもりですが,なかなかに魅力的なクロカン4駆(あえてこの表現で)が海外市場だけでリリース,というのはあまりにもったいない。インフィニティ・ディビジョンのSUVも正規導入してほしいモデルがあったりしますが,ぜひとも日産には国内市場導入に向けたフィージビリティスタディを,とお願いしたいところです。