GT3RSハイブリッド、プレミア。

確かに,勝負権を持ったレーシング・マシンとは言いにくいですね。


 端的に言ってしまえば,「重い」だろうから,です。


 とは言え。案外に重量配分は悪くない,ように感じます。


 911はRRレイアウトを採用していますから,もともとリア・セクションが重い。設計当時の発想からすれば,駆動力を的確に後輪へ,というひとつの最適解だったとは思うのですが,4WDという方法論が確立していること,さらには前輪への駆動力配分を電子制御することができるようになっていることで,RRの優位性が小さくなっている,というのも確かなことです。前輪を生かす,というのはすでに“カレラ4”で着手されています。重量配分に関して,将来的な解,そのひとつとしてハイブリッド・システムを考えているのかも知れない,などと推理したくなるマシンであります。


 さて。今回はフットボールを離れまして,ポルシェ・ジャパンのニュース・リリースオートスポーツさんのニュース記事をもとに,新たなレーシング・マシンの話などを。



 ポルシェがジュネーブ・ショーで公開するのは,GT3RSハイブリッド,であります。


 欧州メイクスはディーゼルをレーシング・フィールドに投入することには積極的なのですが,ハイブリッド・システムに関してはそれほど積極的な動きを見せてはいませんでした。そんな状況で,ポルシェはハイブリッド・システムを911に搭載,将来的な可能性についての実戦的なデータ収集をはじめる,ということのようであります。
 このマシンに搭載されたハイブリッド・システムは,ウィリアムズ・ハイブリッドパワー社の手になるフライホイール式ジェネレータによって電源供給がなされる,とのことです。レーシング・マシンとして致命的なハンディ,とも言える重量増を招くバッテリを排除するために,KERSの技術をハイブリッド・システムに持ち込んできた,というわけです。
 でありますから,モータを駆動できる時間はかなり限定的であります。エンジンを積極的にアシストする,という意味でのハイブリッドではなくて,ターボ・チャージャーのようにモータを使おう,という意味でのハイブリッドになるようです。ポルシェのリリースにも,コーナ脱出時や追い越し時という表現が使われていますから,スクランブル・ブーストを掛けるようなもの,でありましょう。


 この新たなレーシング・マシン,と言いますか,ポルシェのテスト・ベッドは2010シーズン,ニュルブルクリンクを中心に実戦投入されるようです。特に,ノルドシュライフェ(オールドコース)を舞台として開催される24時間耐久レースが中心になるようですが,このレースでシステムの耐久性や信頼性の確認,本格的に実戦投入するときの課題(修正点)などを洗い出していく,のでありましょう。


 そして見逃せないのが,市販車への将来的なフィードバックであります。


 かつて911が4WDへと踏み出したときも,当初の反応はそれほどいいものではなかった,ような記憶があります。けれど,いつしか確固たるポジションをつかむようになりましたし,ターボ・モデルは4WDで用意されるようにもなった。ひょっとすれば,いつかハイブリッド仕様の911が,ショールームに,などということもあり得るかも知れません。