ソフトウェアとメカニカルの境界線は。

ソフトウェアのセッティングは,メカニカルな要素のトラブルとは違う。


 その通りだろうとは思うのだけれど。
 ならばなぜ,急拠セッティングを変更したのかな,と。

 そもそも,ハイブリッドであろうとなかろうと,メカとソフトウェアはかつては比べものにならないほどに寄り添った関係です。エンジンの出力特性を引っ張り出すまでもなく,ソフトの設定は重要な要素となっています。かつては,カムシャフトであったりピストンの重量であったりを徹底して煮詰めていくことが特性を変えるための道筋,だったのですが,いまはこの「伝統的な手法」に加えてソフトウェアの変更,という手段があります。

 同じことが,ブレーキ・システムにも言えるはずだ,と思うわけです。
 今回は,ちょっとプリウスのブレーキの話などを,ちょっとだけ。


 回生ブレーキ

 電車のメカニズムを知っておられる方ならば,「なるほど。」と思うに違いない考え方であります。アクセルを踏んでいるときは(電車的に言うと,力行時ですか。)駆動力を発生するモータを,逆回転によって発電機として機能させ,この発電時の抵抗をブレーキとしても使おう,という話であります。
 この回生ブレーキから,スムーズに機械式のブレーキにつながってくれない,ブレーキが抜けてしまうような感覚を持つ時間帯が生じてしまう,というのが今回の問題のキモのようであります。

 この問題について,メーカ・サイドの説明は「機械的な問題ではありません」というものでありました。であれば,無償修理の必要性があるとは考えておりません,と。理論的には,なるほどと思うところもないではないのですが,ちょっと疑問も残る,というわけです。


 いまのクルマで,「電子制御」が絡んでいないブレーキというのは,かなりの少数派になってきている,と思います。ABS,であります。この制御ロジックの設定が最適なものにできないと,ブレーキの性能を存分に引き出してやることはできない,ということになります。どうも,今回の問題はこの枠組みに収まるように見えます。


 ごく大ざっぱに言ってしまえば,ABSをコントロールするソフトウェア、そのセッティングの影響で,回生ブレーキとメカニカル・ブレーキとの連携が取りきれないことがある,と。結果,ブレーキの感覚が一般ドライヴァの感覚と違ったものとなり,速度を的確に殺せない,という事態に至りかねない,と。
 であれば,少なくともサービス・キャンペーンは張るべきだったでしょうね。ソフトウェアのアップデートをします,などという形で。


 ソフトか,それともメカか,という話ではなくて。
 ソフトがあってのメカで,メカあってのソフトという関係にブレーキをはじめ,クルマのメカはなってきていると思います。その認識が,トヨタには薄かったのかも知れませんし,「危機管理」という側面から今回の話を眺めるならば,メルセデスアウディが取った対応に比べ,徹底した感じは受けません。

 大きな組織であることは承知ですが,どうも舵の効きが悪いような,そんな印象を持ってしまいます。