「カップ戦」の持つ怖さ(TLプレーオフ・トーナメント決勝戦)。

レギュラー・シーズンと,カップ戦とはやはり別物であります。


 ごく当然のこと,ですが,そのことを痛感します。


 ラグビートップリーグの覇者を決定する,短期決戦。
 その決勝戦でありまして,今回は楕円球な話を書いていこう,と思います。


 まずは,再びランナー・アップとなったワイルドナイツでありますが,ブレイブルーパスを突き崩すことができなかった,という印象であります。それだけ,ブレイブルーパスの仕掛けていた守備が的確であり鋭かった,と言うこともできましょうが,攻撃面で精彩を欠いた,と見ることもできるでしょう。
 もちろん,トライゲッターを欠いている状態ですから,その部分は差し引くべきか,とは思うのですが,「短期決戦」を俯瞰して眺めてみると,どうもワイルドナイツは不安定さを抱えていたかな,と思います。


 準決勝,あるいは短期決戦初戦を振り返ってみると,ギリギリの戦いを制して秩父宮へと足を踏み入れたわけです。近鉄花園でのゲーム,その後半だけを切り取れば,ヴェルブリッツの攻撃を抑え込むだけで精一杯の状態へと追い込まれてしまって,リズムをなかば手放した状態で準決勝を終えた,とも見ることができました。短期決戦で,加速態勢を築き切れずに決勝戦へと入ってしまった,と感じます。


 対して,ブレイブルーパスサンゴリアスを制して秩父宮へと駒を進めることができています。サンゴリアスを率いる指揮官は,徹底して相手のストロング・ポイントを潰すという戦い方に長けています。その戦い方を抑え込んできているわけですから,決勝戦への流れは悪いはずもありません。


 すべてを,「流れ」で説明するのはいささか乱暴であるとしても。


 少なくとも,チーム・コンディションが安定していたのがブレイブルーパスであり,ワイルドナイツは短期決戦のタイミングでコンディションが不安定化してしまった,とは感じます。決勝戦にあって,大きくスコアが動くことは少ない,と見るべきでしょう。であれば,0−6というファイナル・スコアはあり得べきスコア,でありましょう。「僅差」が勝者と敗者とを厳然として峻別する,と言い換えることもできるでしょうか。そのときに,チーム・コンディションを安定させることに成功し,チームとして表現すべきラグビーにブレを生じなかったのがブレイブルーパスであった,という印象であります。


 数季前のブレイブルーパスは,それこそ「盤石」という表現が適当なチームでした。
 守備応対にしても,攻撃を仕掛けるにしても,ブロックが相手チームに強烈な圧力を掛け与えているだろうことが,アウトサイドからも感じ取れるようなラグビーでした。そのイメージが,ちょっとだけ戻ってきているような印象を持ったりもします。選手権にあっても,間違いなく鍵を握るコンテンダーである,と思います。


 ではあるのだけれど,レギュラー・シーズンを首位で終えることができるわけですから,ワイルドナイツのポテンシャルが低かろうはずもありません。東京三洋電機ラグビー部,などという時代から「詰めの甘さ」を指摘されたり,それゆえに「無冠の帝王」などという,ありがたくもない称号を受けてもきているわけですが,今季も「リーグ・チャンピオン」という称号を奪取する,という側面においては同じ轍を踏む結果になってしまいました。この結果を,ぜひとも選手権に生かしてほしい,とワイルドナイツに好意的なバイアスを持っているラグビー・フリークとしては思っています。