「斜め」の速さ。
逆風であっても,前に進むことはできる。
ただ,的確な角度を維持すれば,であります。
また言うまでもなく,斜めに進むわけですから,いつか逆方向へと針路を取り直さなければ,本来の針路から大幅に外れてしまうことになります。
そこで,的確なタイミングで“タッキング”と呼ばれる方向転換をする必要があるのです。
さて。「はてな」でははじめて,のフットボールの話であります。
ありますが,なぜかヨットの話であります。
ちょっと謎解きをしますと。
「サッカーダイジェスト」誌(1041号)に現任指揮官のインタビュー記事が掲載されておりまして,その中に印象に残る部分がありました。
ピークを過ぎれば下り坂になる。しかし、その下り坂を進んでいるときに刺激を与え、うまく改革を施せれば、再び上昇気流に乗れる。そして、もう一度、大きな山を登るための準備をしなければいけない。
というコメント,であります。
ここ数季の浦和,その立ち位置であり,その立ち位置をどのようにして変えていくつもりなのか,ということを表現したコメントであるように感じます。受け取り方によっては,静かな決意表明,であるようにも感じます。
このコメントの「上昇気流」という言葉から風を連想し,ヨットに思考が結び付いた,というわけなのです。
アメリカス・カップに参戦するIACC級のレーシング・ヨット,このレース艇を設計したひとへのインタビューを,何かで見た記憶があります。
その方が言うには,「まっすぐの状態での凌波性」はもちろん大事なのだと言います。さらに大事なのは,斜めに進むときの凌波性であり,スピードなのだ,と。
確かにその通り,なのです。
ヨットレースは,風上と風上にセットされたマーク,そのマークを回航する形で争われます。つまり,レースの半分は風上に向かうわけです。
そのときに艇はどのような姿勢なのか。「斜め」であります。斜めの姿勢で風を捉え,「速さ」を求めないといけないのです。
浦和は,確かに風上マークを回航して,スピンネーカーを存分に広げ、艇の速度を上げていたかも知れません。
そのときは,レース艇が「まっすぐ」の性能を意識していればよかったわけです。
けれど,いつか艇は風下マークに到達します。そのときには,素速くスピンを収納,風上に向かっての航行をはじめなければなりません。
そのときに,求められる「斜め」の性能を,浦和というレース艇は持っていたか。
スキッパーが代わり,操るべき艇,その基本設計も大きく変えた。
変えたけれど,クルーがすべきことに大きな違いはないはずです。
艇を風上マークまで持って行くことであり,再び収納したスピンを広げること,でありましょう。
09シーズンを考えると,細かいタックを繰り返した,という印象もあります。
同時に,大きなタックを1回しただけ,という印象もあります。
ジブ・セイルにしっかりと風を受けていたタイミングもあったけれど,風を逃してしまったタイミングもある。
スキッパーも読みを違えたところがあるのでしょうし,クルーは新たな艇(フットボール・スタイル)に対する確信が持ちきれていないから,動きが後手に回った,ということもあるでしょう。
10シーズンは,艇のクセを感じ取ったクルーにとって真価が問われる時期でもあり,スキッパーにとってはしっかりとクルーと艇の相性を感じ取ったでしょうから,やはりまた真価が問われる時期でしょう。
10スペック,というレース艇が,どのような「速さ」(強さ)を見せてくれるのか。
ジブ・セイルに風をしっかりと捉えることができるのか。
しっかりと見ていきたい,と思っています。