「学校」という可能性。

プロフェッショナルの大きな活動基盤。


 「地域」という存在であります。
 強さを持つようになると,存在感が相対的に希薄になる,ことはありましょう。ありましょうけれど,無視してしまっていい存在だとも言えないはず。そんなプロフェッショナルよりももっと前からその地域に根ざしている存在は何なのか,と考えてみると,そんなに意外な話ではない,とも言えるように感じます。


 さて,本題へと入る前にちょっと阿部選手の話など。


 2009シーズンを見る限り,中盤での機動性アップは,浦和が狙うフットボールにとって大きな要素であります。ボール奪取を仕掛けていくにせよ,相手ボール・ホルダーを追い込むにせよ,戦術的な理解度が最も高いエリアであることが求められる,と。そんなエリアで実力を発揮してほしい,そしてケースによっては最終ラインでもパフォーマンスを,と思える重要な選手であります。
 その阿部選手でありますが,こちらの記事では,去就についての態度を保留したまま,という表現を使っておりますが,個人的には
 保留せざるを得ない

のだろう,という印象であります。


 フットボーラーとして,チャンスがあるならば夢を追いたい。そんな思いもあるでしょう。
 オフ期間には,欧州クラブからのオファー,という話がスポーツ・メディア経由で伝わってもいました。ただ,そこから具体的に話がクラブ間交渉へと本格進展している,などという話は伝わってきていません。移籍ウィンドウが完全にクローズしてしまうまでは,可能性が断たれない限りはオファーをより具体的なものへと動かしていきたい,という意識も,どこかにありましょう。


 ひとりのフットボーラーへの目線として言えば,チャレンジできる可能性があるのであれば,積極的にチャレンジして欲しいという思いもあり,同時に浦和という軸足を思えば,コンビネーション・フットボールをさらに熟成させ,「脅威」へと引き上げていかなければならない時期に,痛い戦力ダウンになってしまう,という思いもあります。


 残ってほしくあり,夢を追ってほしくもあり。


 どちらでもあって,どちらでもないようで,というのが正直な思いだったりします。


 ・・・では,ちょっと話を戻しまして。


 「流通経大FCが別チーム編成でJ目指す」という日刊スポーツの記事をもとに,学校を基盤とするプロフェッショナル,その可能性を考えてみよう,と思います。


 もともとのきっかけは,選手登録に関する規則変更だとのことです。
 JFLと大学リーグとの二重登録が可能であったのが,今季から二重登録が禁止されることになるのだとか。多くの選手に,実戦経験を積ませるためのJFL参戦だったと記憶していますが,自由に選手を入れ替えることができないとなると,JFL参戦に関して新たな位置付けが必要になってきてしまいます。そこで流経大が考えたのが,将来的なプロフェッショナル参入,だったようであります。


 もちろん,プロフェッショナルとしての活動規模を考えれば,ハードルは無数にあると言うべきでしょう。特に,クラブ・マネージメントの基盤となる財政面,こちらでの徹底的な強化ができなければ,プロへのスムーズな移行は難しいでしょうし,地元自治体との協力関係をどのように構築していくか,も当然に重要な要素であります。


 ただ,「地域との関係性」を,もともと学校は持っています。
 その関係性を,プロフェッショナルとしての活動に結び付けることができるならば,Jリーグへの参入形態として,新たな形を示すことにもなりましょうし,可能性を広げることにもなるか,と思います。


 そして,組織面を思えば,意外にプロフェッショナル的でもあります。
 高校段階を考えてみると,選手の出身クラブに・・・ジュニアユース,などという表記を目にします。プロフェッショナルにせよ,あるいは街クラブにせよ,いわゆるフットボール・クラブの下部組織,ではなくて,高校との関係性を持った下部組織,であります。で,その高校が大学の付属校であれば,そして大学へとそのままステップアップしていったとすれば,サッカー部のプロフィール欄にはどう書かれるか。
 大学をトップとする構造が,すでに構築されている,とも見えるわけです。であれば,移行するつもりがあるならば,できないこともない構造を持っている,とも感じるわけです。


 実業団ベースでもなく,欧州クラブのように同好会をオリジンとするものでもなく。とは言え,「実質」を見るならば欧州クラブ的な成り立ち,と言えるかも知れない。


 そんなクラブが将来的に立ち上がってくるのかどうか。ちょっと,楽しみであったりします。