トリニータへの追加融資に思うこと。

強くなければ,トップ・ディビジョンで戦い続けなければ。


 そんな意識が,大分を苦しめてはいなかったか,と思います。


 トップ・ディビジョンが主戦場でなくとも,クラブがチカラを蓄えていける。トップ・フライトを果たすまでの時間が増えてしまったとしても,クラブがネガティブな循環へと嵌り込むことのないリーグ形態であり,クラブ・マネージメントであり。そんな要素が,見落とされてはいなかったかな,と思うところでもあります。


 さて。こちらの記事をもとにトリニータのこと,その周辺環境をちょっと考えてみようか,と思います。


 まずは,トリニータでありますが。


 まだ,クラブとして「無理」をするという意識から抜け切れていないかな,と感じます。
 恐らく,基本的な発想としてトップ・フライトを狙えるだけの位置を確保し続ける,ということが置かれているのではないかな,と感じます。(メルカート的な表現で,個人的には決して好きではないのですけど)主力選手を多く売却するなど,保有戦力的な側面からクラブ・マネージメントへの負荷を軽減しようという意識は明確に感じ取れはするのですが,2010シーズンに向けた運営費は9億円を超えるとか。


 クラブとしての体力を,落としたくはないという発想は理解できます。
 しかし。言ってみれば“ドーピング”を繰り返しながら「強さ」を追い求めてきたことで,結果としてクラブとしての根幹を大きく揺るがせてしまったのではないか,とも思うのです。


 いま求められるのは,「体質改善」ではないでしょうか。
 脆弱化しているクラブ・マネージメントを立て直し,プロフェッショナル・クラブとして相応しい状態へと戻していくことが,最も重要なことではないか,と思うわけです。


 であれば,トップ・フライトをどれだけ「待てる」か,も重要な要素でありましょう。
 トップ・フライトをできるだけ早く,などと思えば,恐らくは再び「無理」の循環に嵌り込む。嵌り込んでしまえば,最も望ましくない結論へと行き着いてしまうのではないかな,と。そうならないためにも,クラブ・マネージメント,特に財政面での安定性確保に向けた方策を徹底的に再構築する必要があるのではないか,と思うところです。


 もうひとつ。周辺環境も大事な要素になってくるかも知れません。


  “プロビンチア”が無理をしたくなる,その大きな要因。
 煎じ詰めて言えば,「おカネ」でありましょう。パートナー,と言いますかスポンサーへの訴求度しかり。トップ・ディビジョンで単に活動できるレベル,ではなくて,勝負権を維持できるレベルを,となれば,地方に基盤を置く会社に意識を振り向けるのではなくて,どうしても中央に意識が向いていく。そして,中央を振り向かせるために,「強さ」を無理をしてでも追求することで,クラブの循環を何とかしてポジティブな方向へと導く。けれど,「強さ」が何らかの要因で揺らげば,クラブ自体が揺らぐ。「無理」の反動は,大きな形でクラブを襲う。
 クラブ・マネージメントに一義的な責任を求めるのは当然として,「無理」という誘惑を,周辺環境が作っていた可能性も考えておくべきか,と感じます。


 フットボール・クラブが,「無理」を繰り返さないとやっていけない。そんな状況は,「百年構想」に反するものでしょう。トリニータに訪れた危機は,リーグに対するメッセージとして受け取っていいと思うところがあります。極論かも知れませんが,クラブ創設から数えて100年後のトップ・フライトで地元が,そしてメディアが盛り上がることができる,というのもひとつの姿だろう,と思うのです。トップ・ディビジョンに上がらないと回らないシステム,というのではなくて,しっかりとクラブが体力を付けていけるセカンド・ディビジョンでありさらなる下部リーグが,求められていいと思うのです。
 トップ・ディビジョンというのはある意味,下部リーグという土壌で育った作物のようなものでしょう。その土壌が,いまはそれほど肥沃とは言いがたい。トップ・ディビジョンに振り向けられていた意識を,下部リーグへと振り向けるきっかけに,このトリニータの問題がなってくれるといい,と思ったりします。