“NAVI”休刊に思うこと。

個人的には,苦手なままだったような気もします。


 ひとつひとつの記事を見ていけば,すごく興味深いものもありました。たとえば,ダイナミックセイフティ・テストであります。受動安全性については,NHKの番組をきっかけとして認知度が高まった,という記憶があります。対して,能動安全性については,なかなかその重要性が認知されていかなかったように感じます。ともすれば,スポーツ性だけに結び付けられてしまいがちな運動性能が,緊急回避などの側面において大きな意味を持つこと。このことを認知させてくれたことは,大きかったように思うのです。


 ただ,全体的に眺めると違った印象を持ってしまうのです。


 オールラウンド,と言えばオールラウンド。クルマだけでなく,その周辺にも視野を広げている,と。でも,この雑誌が持っていた視界がどうも自分自身の視界にはフィットしなかった。時計にしても,ファッションにしても決して嫌いなわけではありません。ありませんが,“スノビッシュ”な香りに馴染めなかったわけです。


 同じ香りを持った雑誌(と言いますか,編集長を思えば国籍違いの親戚,のようなものでしょうか。)もありますし,余計に影響があったのでしょう。


 タイトルにも掲げましたが,“NAVI”が休刊とのことです。出版不況,と言いますか,広告収入面での不振が休刊という決断に至った背景だとのことですが,クルマ,というものに関するスタンスも,どこかで影響しているのではないかな,などと思ったりします。


 さて,ちょっと話を戻しますと。


 彼らが扱っていたファッション,そのエリアを眺めると,どちらかと言えばモード方向であります。モードなテイストも決して嫌いなわけではありませんが,ファッションとしてそれだけか,と思ってしまうのです。オーセンティックなモノにも良さがあり,カジュアルなモノ,たとえばワーク・テイストを持ったモノであったりにも魅力的なものはあります。そういう部分はどうなんだ,と。


 さらに。時計にしても高級時計を対象にしています。そういう,トップレンジな時計の知識も確かに重要であります。ありますが,時計趣味はそれだけではないはずです。もうちょっと,趣味というのは範囲が広いものだし,そもそも新品だけが対象なのか,という疑問もあります。機能だけを考えるのであれば,ケータイだって結構な精度を持っているし,無理に時計を手に入れる必要なんてない。そういう方向で時計を考えないのであれば,ヴィンテージも対象となるはずではないか,と。


 クルマを切り口にしながら,その周辺にも興味を広げていく。そういうやり方は,新潮社の雑誌にも受け継がれておりますな。


 私のライフスタイルと,重なるところがあまりに薄い。


 要するに,ハイエンドなものを所有するにはサイフが軽い(軽すぎる)のでありますが,等身大な趣味として,だったり,長続きする趣味,あるいは初期投資をしっかりとすれば,それこそ一生楽しめるような趣味としてファッションだったりクルマを見よう,という形にいつの間にかシフトした立場からすると,「流行」だったり「最新」だけを追い掛けるメリットを感じにくくなっているのも確かなのです。


 とあるTVドラマではありませんが,“リアル・クローズ”だったり,この言葉を借りれば,“リアル・ビークル”だったり。


 そんな存在は,プライス・タグで見つかるものでもないし,新車情報からだけ見つかるものでもない。ハイストリートでは見つからないものが,ケースによっては古着屋のラックにあるかも知れないし,すごく敷居が高そうな,ビスポーク・テイラーのテーブルにあるかも知れない。クルマならば,一等地のショールームではなくて,どこかの修理工場,そのバックヤードにあるクルマも,自分にとってのリアル・ビークルという可能性がある。先入観を取り外して,あらゆる可能性に目を向けると,それまで気の付かなかった「自分の趣味にフィットするもの」,「一生モノ」に出会える,かも知れない。


 ひとつの時代を築いた雑誌,という思いはあるけれど,個人的には,どうも重なることなく過ぎてしまった雑誌,という印象も拭えずにいます。