とあるリリースに寄せて。

「新規入団」ではあるけれど,「昇格」しての新規入団。


 高校チームからの入団も,昇格もクラブ生え抜きであって,変わりなどないのですが,下部組織からファースト・チームへ,という形の嚆矢でした。それだけに,理由もなくただうれしさを感じていたな,という記憶があります。


 ファースト・チームで確固たるプレゼンス,ということはできなかったかも知れません。けれど,局面での煌めきというか,眩さというか。そんな要素を持ったフットボーラーだったように思います。
 真紅のユニフォームを纏うことにプライドを持ち,ファイティング・スピリットを放散するかのようにピッチを駆ける。


 そんな,強く印象を残すフットボーラーが,浦和から移籍していく。


 煌めきを失うことなく,新たなユニフォームで今度は確固たるプレゼンスを。浦和ではできなかった,スターターとしての活躍を,と思っていたのです。


 けれど,彼を襲うのは「ケガ」。


 J's GOALに掲載されたリリースを見ると,ケガからのリカバリーがどれほど厳しいものだったか,受け取れるように思います。ゲームを求めてクラブを移る,という決断をしているはずなのに,実際には「ケガとの戦い(恐らくは,「自分との戦い」だった時期も相当にあったと思いますが)」,トップ・フォームを取り戻すためにシーズンを費やしてしまったようにも見て取れます。


 できるならば,もっとピッチでその姿を,と思ってしまうキャリアです。「おつかれさまでした」という言葉よりも,「もったいない」という言葉が口を突く。そんなリリースでもあります。


 フットボーラーとしてのチャプターを閉じ,新たなチャプターを書きはじめる。新たなチャプターが,どのようなものになるのか,楽しみにしたいと思いますし,願わくば,プレゼンスを示すものであらんことを。