対FC東京戦(09−31A)。

2つの意味で,“ミラー・ゲーム”だったという印象です。


 ひとつはもちろんのこと,“On the Pitch”での話であります。


 浦和の主戦パッケージは,4−2−3−1であって,4−4−2ではない。であれば,ミラーにはならないのでは,と思うところですが,今節のパッケージはリアリスティックな要素を落とし込んだものとなっていたように受け取れます。


 4−2−3−1でありながら,4−4−2。


 パッケージという側面から今節を考えるならば4−4−2,特に4−4ブロックが鍵を握っていた,という印象を強く受けます。


 そして,もうひとつは時系列的な話であります。であれば,浦和が,という話ではなくて,むしろ対戦相手であるFC東京に関わる話です。


 ムービング・フットボール意図的に抑え込み,川崎の攻撃を抑え込んだ戦い,その手法を浦和は応用してきたようにも,映るわけです。


 ということで,まいど1日遅れでありますが,FC東京戦であります。


 さて。4−4ブロックであります。


 フォルカーさんにしてみれば,コンビネーション・フットボールという基盤を崩すことなく,リアルな方向へと戦術的な調整をするにあたって,比較的論理的な手法だったか,と思いますが,今節はこのために攻撃へのスイッチが入りにくかったかも,という印象も残っています。


 ボール・コントロールを保持している時間帯では,いままでのパッケージであります。1トップがステーションとして構え,ステーションとの距離感,そしてセントラルとの距離感を意識しながらウィング的にアタッキング・ミッドフィールドが構える,という形であります。そして,SBが積極的な攻撃参加を仕掛けていくことで,攻撃を組み立てる,と。
 ただこのときに,SB裏のスペースを狙われる,という形が多かったわけです。ライン,という意識がSB,CB含めて薄くなってしまっているから,でもあるでしょう。ポジションをスライドさせる,という意識においても,組織的な約束事が固まりきっていない,と。


 この,物理的なスペースを消す方向で前半を戦っていた,という印象を持っています。


 恐らく,SBに関して攻撃参加という意識を強く動機付けるのではなくて,むしろ,ライン・コントロールという側面での動機付けをしていたのではないでしょうか。同時に,中盤がフラットに構える時間帯を作ること,最終ラインと中盤が縦に連動する形で守備応対を,というイメージを徹底していたのではないか,と。


 相手のトップに対しては,最終ラインがライン・コントロールを繰り返すことで飛び出しに対するケアをすると同時に,相手中盤が自由にボールを動かせないようにスペースを潰す方向でのポジショニングを,ミッドフィールドが意識する。バックスタンド上方から確認する限り,攻撃を仕掛けているときのパッケージから,ボール・コントロールを失ってからのパッケージには,かなりハッキリとしたギアチェンジが感じられるゲームでありました。


 それだけに,攻撃面からリズムを,という形の立ち上がりではなく,むしろカップ戦的に「静かな」45:00までの時間帯ではなかったかな,と思います。守備的な安定性を意識しながらも,当然攻撃へ,という時間帯ではSBが仕掛けていく。攻撃面での分厚さを,となれば,SBがアタッキング・ミッドフィールドとのコンビネーションの中から仕掛けに,という形は重要であります。それだけに,SB背後のスペースが100%抑えられる,というわけではなく,今節においてもこのスペースから決定的な局面を相手に,という形が前半終了直前の時間帯にありましたが,全体的には守備でリズム,という前半だったように受け取れました。


 ハーフタイムを挟んで,でありますが。


 積極的に攻撃面でリズムをつかむ,攻撃面からゲームの主導権を掌握する,という形で後半を立ち上がり,この時間帯で先制点を奪取します。守備的な安定性を意識して前半を,という形ではありましたが,この時間帯は09スペックらしさをみせた時間帯ではなかったか,と感じます。追加点奪取,と同時に相手が仕掛けるカウンターへの意識を強めていた,その引き換えだったとは思いますが,浦和はショートハンド,という状態になります。このショートハンドによって,結果的に4−4ブロックのタスクが絞り込まれた,という形になったか,と思います。


 攻撃面で必要以上にバランスを崩せば,相手のカウンターを数的不利な状態で受け止めざるを得なくなる。むしろ,相手の攻撃を4−4ブロックで抑え込みながらボール奪取位置を引き上げ,タイミングを冷静に狙って仕掛けていく,というような形でゲームを展開していた,という印象です。


 もちろん,4−4ブロックを崩さずに,というわけにはいかなかった。組織的に守備応対,と言うよりも,ゴーリーを含めて守備ブロックの持つ「個」で相手の攻撃を何とか凌いだ,という時間帯も少なからずあった,とは思います。それでも,後半立ち上がりの先制点を,決勝点とすることができた。


 決して,内容面で評価できるゲームではありません。09スペックを熟成させる,という側面から見れば,停滞から逆行,とも受け取られかねないゲームでもあります。


 けれど。


 再び嵌り込みつつあった悪循環から抜け出すための,重要な「手掛かり」になってくれるのではないか,と思います。実戦という負荷が掛かった中で,4−4ゾーンでの守備応対が一定の時間帯で機能したことは,4をベースとする守備が「やっと」浸透しはじめた,とも感じられるのです。


 ・・・最後に。もうひとつのミラーでありますが。


 ナビスコカップ勝戦での,彼らの戦い方であります。ムービング・フットボールという要素をある程度抑え込み,川崎に対してはボール奪取ポイントを提供しないことを狙う。3ラインを低めに構えながら,相手がバランスを崩すタイミングを狙って攻撃を仕掛ける。ディテールに違いがあるとは言え,基本的なアイディアとして,今節の浦和とカップ戦決勝戦でのFC東京とは,「現実主義的に戦術を微調整する」という部分での共通項があったように思うのです。


 真正面から,お互いの戦術的な要素がぶつかり合う。確かに,魅力的な話ではありますが,プロフェッショナルとしてのアプローチは「結果」から逆算される,ということもまた確かです。結果を導くための理想であり,その理想を現実的な要素で微調整する,という決断であり。


 特にシーズン終盤にあっては,結果が持つ重みは増してきます。その結果を前に,どのように考えるか。


 彼らが数日前に下した決断を,今節は浦和が決断した。チームが「手掛かり」をつかみ取るためには,この決断は必然だったのではないか,と感じます。