対大宮戦(09−30)。

(30)という数字が示すだけの,熟成度が示せたか。


 それだけでも,問題は深いと思うのですけど。


 相手に敬意を払う(=スカウティングを通じて,相手のらしさを封じ込めるきっかけをつかむ),という姿がどうしても,ピッチから受け取れない。相手のフットボールを意識しながら,同時に自分たちのフットボールへと引き込む,というアプローチを取れるような段階ではなく,自分たちのフットボールを表現するだけでオーヴァ・フローを起こしているような段階なのか,と。


 だとすれば,チーム・ビルディングがめぐりめぐって,初期段階に戻ってしまっている。それほどまでに,4を使いこなせていない印象だけが残りました。


 まいど1日遅れでありますが,大宮戦であります。


 基本的には,アルウィンでのゲームと同じ図式に嵌り込んだわけですけど,どうも戦術的な要素と意識とのアンバランスが大きく作用しているように思うのです。


 今節は,相手のゲーム・プランを読み取るまでもない。彼らは,「自分たちの強み」(=4−4ブロックからの徹底した守備応対)を押し出すことで,「勝ち点3」に相応しい戦いをした。現任指揮官のスタイル,というよりも,彼らがある意味,DNAとしてきているスタイルを押し出して。
 そんな相手に対してあまりに無防備だったのですから,フェアな結果,以外の何物でもないでしょう。


 今節は,別方向から見る方がいい,とは思います。ですが,あえて戦術方向から見てみます。


 「縦」(トップから最終ラインまで)をコンパクトに。


 その意識は,確かにピッチからも受け取れます。受け取れるのですが,「何のために」コンパクトにしているのか,と。
 意図を伴った,コンパクトネスだったでしょうか。意図を持ってコンパクトネスを表現した時間帯が,どれほどあったでしょうか。コンパクトさを維持すべき理由は,相手ゴールから近いエリアでボール・コントロールを奪い返すためではなかったでしょうか。本来の意図を離れて,単純にコンパクトにしているだけ,の時間帯があまりに多かったように感じます。


 では,中盤から見ていきますと。


 繰り返し書いていることになりますが,ボール・コントロールを失った直後の対応に緩さを残していたり,ファースト・ディフェンスにどういうユニットで入っていくのか(=相手ボール・ホルダーを囲むために,どういう形で数的優位へと持ち込むか),という戦術的な約束事が表現されない,その前段階として約束事自体が曖昧なままで残されてしまっている,などの戦術的課題が,シーズン終盤にあっても修正されていません。


 ボール・コントロールを失うきっかけにしても,修正が掛かってはいません。


 レシーバが,ホルダーの視界に収まっていない。と言いますか,積極的に視界に入るようなフリー・ランを仕掛けてはいない。意識に,ズレがあると感じます。となれば,どうしても「あらかじめ見えている」ところを狙ってしまう。局面によっては,厳しいコースを狙わざるを得ない。そして,相手にとってはボール奪取ポイントが絞りやすくもある。機動性が低下している,特に仕掛ける,というタイミングでの連動した機動性,という面では今節はまったくと言っていいほどに表現できていなかったように受け取れます。


 さらに言うならば。


 チームとしてどのエリアでボール奪取を狙うのか,という戦術意識が,徹底されているようには受け取れない。そのために,ボール奪取を狙いに行くファースト・ディフェンスなのか,それとも相手ボール・ホルダーのコースを限定する程度のファースト・ディフェンスなのか,何とも中途半端なディフェンスになってしまっています。


 機能不全に陥った中盤と関連するように,最終ラインのポジショニングと守備意識が関わってきます。


 コンパクトであることを意識すれば,最終ラインは高くセットされます。であれば,高くセットされたラインに対応する守備応対が求められるはずですが,実際にピッチで表現されるフットボールは,相手ゴールに近いエリアでのボール奪取を狙った守備をベースにしているようには思えません。強いて言うならば,かつての最終ラインへと追い込んでいくような守備に近い形になってしまっています。だとすれば,背後にあるスペースは相手にとって重要な攻略ポイントとなってしまいます。ラインが低くセットされているからこそ,の守備応対を,高くセットされているにもかかわらず,続けてしまっているように見えるのです。
 さらに,最終ラインが相手に対して「駆け引き」を積極的に仕掛ける印象が,あまりに薄いという印象を持ちます。細かいライン・コントロールを繰り返しながら,相手に対して牽制を仕掛ける,という形がほとんどなく,単純に飛び出しに対してリアクティブな守備を,という形になってしまっています。


 ボールをどう奪うか,という局面で,約束事が表現できていない。どこが,ではなくて,どこもが,です。


 攻撃を仕掛けるとしても,その前提にはボール・コントロールを奪うことがあるはずです。前提が失われているようなゲームなのですから,攻撃が機能しないのもある意味,ロジカルな話だと言わざるを得ないように思うのです。


 ・・・30節を経過しているのに,4らしい動きになっていません。


 どこか,かつての姿から抜けきれていないような印象でもあります。さらに言うならば,ひとつひとつの要素に「だけ」意識が飛んでしまっているようにも。たとえば,「ダイレクト・パス」という要素であり,「コンパクト」という要素であり。その要素が,「何のために」必要なのか,ということが抜け落ちてしまっています。


 結果を引き出すための,ひとつの方法論であります。そして,チームとして徹底しておきたい方法論です。ただ,外れてはいけない,という話でもないはずです。
 局面によっては,柔軟に変化させる必要もあるはずです。そのときに求められる,ゲーム・インテリジェンスという部分で,今季は「足らざるもの」があるように思えます。


 今季は,新たなフットボール・スタイルの構築へと踏み出しました。序盤は,望外とも言うべき結果を手にもしています。しかし,ファースト・チームの陣容が整ってくるのと反比例するように,今季のフットボールの表現度が下がり,確信が揺らいでくるとかつての姿が顔をのぞかせてきた,という感触を個人的には持っています。過去のエッセンスがまったく不要,というわけでは決してないけれど,残しておいてもらいたいものが,残っているわけではないな,と感じるわけです。


 今季の「戻るべき場所」がどこなのか。この時期に言うべき話ではないのですが,再確認してもらいたいものです。