ダービー徒然。

たとえば,ユナイテッドとガンナーズというカード。


 オールド・ファンなひとにとっては,ユナイテッドとレッズというカードになりましょうか。イングランドにおいて,リーグを代表するゲーム,であります。


 ありますが,“Derby”という表現を使うに相応しいか,と思うと,ちょっとした疑問符が付くのも確かです。“Classic”であったり,“National Derby”という表現をされたりもしますが,どこかに違和感が付きまとう。


 とある時期における,2つのクラブの実力を反映している側面が大きいから,です。


 とは言え,ユナイテッドとレッズはちょっと違ったニュアンスを持ちます。


 ユナイテッドとレッズは,物理的な近さに加えて,“欧州でのプレゼンス”という部分でユナイテッドがレッズの後塵を拝していたわけですから,対抗意識という部分でダービー的,という見方も成り立ちますし,そんな意識を感じたことも実際にあります。ただ,“Derby”というフレーズを持ち出すのであれば,レッズにとっての対戦相手はスタンディングの位置関係にかかわらず,グディソン・パークを本拠地とするクラブであり,ユナイテッドにしてみれば,シティ・オブ・マンチェスター(かつての本拠地である,メイン・ロードが気分だ,というひともおられましょうけれど)をホームとするクラブではないかな,と。


 ネイション・ワイド,という感覚からすれば,まったくの逆方向。ローカル方向に,ダービーという存在はあるな,と思うわけです。


 ということで,今回はちょっと,ダービーな話を徒然に。


 数少ないながら,UKな知り合いというのもおりまして。彼は,スパーズ・ファンなわけです。


 かつての話になりますが,私は彼に,ちょっとだけ意地悪な質問をしてみることにしました。


 「リーグ戦でのスタンディングと,ガンナーズに勝つこととどっちが大事?」と。あえて,ノースロンドン・ダービーの関係性に踏み込んでみたのです。


 彼は,ある意味想定通りの回答をしてきました。ちょっとジョークめかした言い方ではありましたが。


 「ガンナーズに勝つことさ」,と。恐らく,相当程度のホンネが隠されていた,と思います。


 ここでも書いてきたことでありますが,ガンナーズはトップ・ディビジョンで最も安定した成績を収めてきたクラブです。当然,スパーズを真正面からライヴァル視している,という時期はそれほど多くはないはずです。となれば,スパーズはガンナーズを追い掛ける立場となるはずですし,ガンナーズとの対戦が「勝ち点6」に相当する形でリーグ戦を戦う,というケースも残念ながらそれほど多くはない。ロンドンでの存在感を誇示するために,なんとしてもガンナーズから勝ち点3を奪いたい,と強く意識するのは,どうしてもスパーズを追い掛けている立場になりましょう。


 そんな背景が,見え隠れしていたように思うわけです。


 あちらは,クラブ創設から100年以上を経過しているけれど,こちらはプロフェッショナルに移行してからそれほど時間が経過しているわけでもなく,どういう関係になるかもまだ流動的な部分が多かったりもする。


 それでも,「いつかは」そんな関係になっていく,かも知れない。その,スタート段階を見届けている,というのはいまのスパーズ・ファンだったり,ガンナーズ・ファンには味わえない,特別なものかも知れない,と思ったりもします。