対千葉戦(09−28)。

ファイナル・スコアだけを取り出せば,違った印象となるかも知れません。


 けれど,数字では表現できない部分で,不安定性を見せていた,とも言えるでしょう。


 まだ,「らしい」フットボールを展開できる時間帯が,限定されてしまっている。シーズン序盤での機動性が,「整理された」形で取り戻せているならばいいのだけれど,まだ整理が付いていない部分を残しているように映る。機動性を守備面で生かす,という戦術イメージが固まりきっていないからか,ボール奪取位置が想定よりも下がってしまう形になる。


 さらに,「受けてしまう」という,前節での大きな課題を引きずってもいる。自分たちのフットボールへと相手を引き込むのではなく,相手が展開しようとするフットボール,その形に嵌り込む。


 ボール奪取で不安定さを見せているから,ミッドフィールドで後手を踏む。


 結果として,相手にリズムを掌握される,という形に嵌り込んでいくような印象を持っています。


 ・・・「勝ち点3」という結果を奪取したからこそ,自分たちのフットボールを表現できる時間帯を着実に積み上げていってほしい,と思うわけです。


 まいど1日遅れ,でありますが,千葉戦であります。


 今回は,相手が用意していただろう,ゲーム・プランを推理するところからはじめます。


 恐らく,相手は前節をフォーマットとしていたはずです。


 前節の相手も,立ち上がり直後の時間帯から,猛然と仕掛けてきました。積極的に仕掛けていく姿勢を押し出すことで,浦和のフットボールを抑え込むことを意識する。リズムを奪うことで,浦和の焦りを誘う。高い位置でのプレッシャーを意識させ,そこからシンプルに仕掛けていく。


 実際,先制点を奪取された局面は,完全に守備ブロックが吊り出された状態でした。アウトサイドでの位置関係で相手に主導権を掌握され,カバーリングにCBが引っ張り出される。引っ張り出されることでスペースが生じ,そのスペースを狙われる。


 確かに,前節から導かれる要素を,先制点奪取の局面で表現された,という印象を持ちます。


 ただ,リズムを崩した要因は相手のスカウティングだけではない,とも思っています。


 今節は,かなり“アンフォースト・エラー”がゲームにネガティブな影響を与えてしまっていたと感じますが,同時にボール奪取が安定性を欠いていたことが,相手にリズムを掌握される要因であり,同時に自分たちのフットボールへと相手を引きずり込むきっかけを失う要因ではなかったか,と感じます。ごく大ざっぱな言い方をしてしまえば,中盤の機動性が2009スペックを支えるに充分な水準にまで戻っていないために,攻撃面にも影響を与え,守備面ではファースト・ディフェンスが効果的に機能する時間帯が少なくなってしまっている,という印象を受けたわけです。


 攻撃面で見ると,パスが窮屈,そして単調になっているような印象です。ショートレンジで相手を崩す,とすれば,パスを預けたあとの仕掛けがどうしても必要です。ですが,「動きながら」ボールを収めていく,という形がなかなか見えない。相手が構築している守備ブロック,その隙を狙うような動きを作り出せない局面が多いから,どうしてもパス・ワークが相手守備ブロックに対する直接的な脅威にはなってくれない。攻撃リズムを積極的に変化させる,そのスイッチが入らない時間帯が増えてしまう,という形ではないか,と思うのです。


 守備面では,どのエリアでボールを奪い返すか,が曖昧なままです。ブロックをできるだけ早く組み直す,という方向に意識が傾いているのかも知れませんが,その反面で中盤でのファースト・ディフェンスが機能する時間帯が少ない。


 というような図式に,特に前半は嵌り込んでいたように感じます。先制点を奪われてからそれほど時間を置かず,フリーキックからスコアをイーブンへと引き戻してなお,リズムを相手に掌握されている,という感覚を前半は持たざるを得なかった。


 そのリズム,後半立ち上がりでの戦術交代で変化したように感じます。


 4−2−3−1,という形と,4−4−2ウィングを局面によって併用するような形へと変化した。トップとの距離感屋ウィングとの距離感,そしてSBとの距離感を調整する形で戦術交代が機能することで,攻撃面で相手守備ブロックを揺さぶりにかかる,という形が見えはじめる。ただ,相手を自陣に押し込むような形を続けながらも,相手ゴーリーを中心とする守備応対に阻まれる形で,追加点がなかなか奪取できない。嫌な均衡を破ったのはセットピースであり,ゲームを決定付けたのは,いささか時間帯限定ではあったのだけれど,積極的なフリー・ランとパス・ワークがしっかりとかみ合った中からの追加点奪取でありました。


 ・・・攻撃面,という部分から見ると。


 フィニッシュに持ち込んでいいとも感じられる局面で,さらに崩しにかかる。そんな形が,今節は印象に残りました。


 相手を揺さぶり切れていない,という意識も,どこかにあったかも知れません。手数を増やすことで相手を振り切り,コースを開けたい,と。必ずしも悪いこととばかりは思いませんが,「シュートで終わる」形が少なかった,とも感じられます。


 2009型のフットボールは,複数が攻撃に関わっていくことで相手ゴールを陥れる,という方向性を狙っていますから,チーム・バランスが攻撃方向に傾いているときに,シンプルなカウンター・アタックを受けてしまうと脆さを見せてしまいます。不用意にカウンターを受けないためにも,フィニッシュに持ち込んでしまうという選択肢も,どこかに持っておいてほしかった,という部分は確かにあります。


 ただ同時に,2009スペック以降を見据えたときに,このバランスは落ち着くべきところに落ち着いていくのではないか,という(希望的観測を含めた)印象も同時に持っています。


 自分が強引にフィニッシュへと持ち込むか。それとも,手数をひとつ増やすことで,相手を揺さぶりきるか。


 この選択には,攻撃面での戦術イメージ,その熟成度もかかわってくるでしょうし,攻撃にかかわる選手,その視界にどれだけフリー・ランを仕掛けている選手が収まってくるか,そしてそんな視界を確保できるか,などもかかわってくるはずです。ピッチで実際に選択をしているプレイヤー。そしてアウトサイドからピッチを見つめるひとの感覚が一致してくる時期が,ともすれば2009スペックからのフットボール,その重要なステップを上がる時期と重なるかも,などと思っています。