ヴェルディ新体制に思うこと。

財政面でのハードルは,確かに高いですね。


 こちらのニュース記事でも指摘されていますが,5億4000万円の契約を11月中旬までに確定させることができないと,Jからの退会という事態になるわけですから,プロフェッショナル・クラブとして踏みとどまるということを考えるならば,当然楽観できるものでもありません。


 とは言え,新たなスタートであることは間違いないことでしょう。まずは,そちらの視点から考えることも大事かな,と思います。ということで,今回はヴェルディのニュースリリースをもとに,クラブ論を短めに。


 プロフェッショナル・クラブとして踏みとどまる,ということを思うと,相当に難しいハンドリングを強いられることになるか,と思います。


 ユニフォームの胸部分に背中部分,スリーブもありますし,パンツも。そして当然,競技場に設置されるADボード。それらをパッケージングして,5億4000万円を確保することが求められている。となると,相当しっかりとしたプリンシパル・パートナーを確保する必要性が出てきますし,その他のパートナー契約も一定程度の契約金額がなければ,達成が厳しい数字でもあるでしょう。


 残念ながら,メディア訴求度が高いとは言えないJリーグでは,観客動員数がパートナー候補へのアピール・ポイントとなるのですが,飛田給に設置されているシート,そのカラーが読み取れてしまうだけでなく,上層階がクローズされている状態が通常に近い形では,アピールという部分でも厳しいかも知れない。


 と思うわけですが,同時に思うところとしては。


 親会社の都合で,クラブの歴史が断絶する,というわけではないのだから,決して悲観する必要もないのではないか,ということです。


 クラブの命脈が尽きるとき,というのは,クラブがトップ・ディビジョンから陥落するときでもなければ,プロフェッショナル・リーグからアマチュア・リーグへと転落するときでもなく,クラブとして歴史が刻まれなくなる(=存在そのものがなくなる)ときであるはずです。


 少なくとも,命脈は尽きていない。


 ネイションワイドでの覇権を視野に収めていた,往時の姿はないかも知れません。育成組織を存立基盤とする,という意思表示をしていることからも,ファースト・チームがトップ・ディビジョンで勝負権を再び取り戻すまでにはある程度の時間がかかるかも知れません。とは思うけれど,これはある意味,彼らにとっての「原点回帰」かも知れない,と思うところもあります。


 ホームタウン,という意識以前の問題として,プロフェッショナルという考え方がメインストリームではなかった時代,自分たちで選手を育成する,そのための組織を構築するというアイディアを持っていた,先進的なクラブ。その姿を思えば,「育成型」というクラブ像は,決して退歩ではないはずだ,と思うわけです。


 ただ,立脚基盤をこれまで以上に明確にしてほしい,と思います。


 東京は,ロンドン的な可能性を持った街であるはずです。ロンドンほどに,地域的な差異が明確に見えるということはないにしても,「個性」の違いはどこかに感じられます。その個性を,クラブが持つ個性に取り込んでいってほしい,と思っています。立脚基盤を明確にすることで,アイデンティティが自ずと明確になるのではないか,という思いを,個人的には持っています。