対横浜FM戦(09−27)。

敵将が,どのようなロジック・フローで試合に臨んでいるのか。


 前回対戦時に,理解したはずです。


 自分たちのストロング・ポイントを押し出すのではなくて,相手が持つストロング・ポイントを徹底して消し去るところからゲーム・プランを組み立てる。であれば,組織的な守備を基盤としながら,攻撃面は「縦」への鋭さを主戦とする。リアリズムを徹底したフットボール,という見方もできるでしょうか。


 そのリアリズムに対して,どのような対処をするのか。


 ゲームを分割すれば,リアリズムへの処方箋を描けていた時間帯もあります。ただ,ごく立ち上がりの時間帯に,組織的な対処に緩さを見せた。その緩さは,相手が描くゲーム・プランに不用意に乗る,大きなきっかけとしても作用している。今節における鍵,そのひとつだったように思います。


 もうひとつの鍵は,フットボール,というよりも,どのような競技にあってもある程度共通する要素でもあったように,個人的には思うのです。


 ということで,横浜FM戦であります。


 ごく大ざっぱに今節を表現するならば。


 「相手のやりたいフットボールに,こちらから合わせてしまった」


ゲーム,という形になろうか,と思います。


 であれば,相手のフットボールから戦術的な問題点を透かして見る必要性も,それほど強くない。自分たちが中途半端な形でゲームに入り,猛然と仕掛けてきた相手を「受ける」形に持ち込まれてしまう。そして,受けるだけでなく,セットピースでフリーにしてはならない選手,その眼前に,スペースを自分たちから提供してしまう。


 緩さであり,軽さ。


 自分たちが狙うフットボールを積極的に仕掛けていく,という姿勢が中途半端になってしまったがために,ゲームを難しくした。「自滅」という側面は,先制点を奪われた局面からも導けるか,と思います。


 反面で,相手に傾いたリズムを引き寄せるきっかけはつくり出していた,と思います。


 特に,前半に限定して考えるならば,内容面での収穫は比較的あった,と感じます。相手守備ブロックを縦方向に引き出す,というだけでなく,横方向に引き出すことでスペースを生み出し,そのスペースからフィニッシュへと持ち込む。ゲームをイーブンへと引き戻した局面もそうでしたし,そのあとの局面でもこのような形が作り出せていた。相手守備ブロックを,ある程度揺さぶりながら攻撃を仕掛けられている。
 パス・レンジ,という部分から考えるならば,ショートレンジだけに過度に依存する形から,ミドルレンジ〜ロングレンジを効果的に織り込む形へとフットボール・スタイルが調整を受け,パスが(ネガティブな意味合いも含む)“オートマティックな”ものから,局面を意識した「意図の伴う」パスへと切り替わっていきつつある,という印象を受けるものでもありました。


 ただ,最終的なフィニッシュが不足していた。


 リズムを引き戻しかけた時間帯に,そのリズムを決定的に引き寄せ,主導権を奪い返すきっかけとなるフィニッシュが,欠けてしまった。どこかが,というのではなくて,微妙なズレが重なっていたのか,攻撃,特にビルドアップ段階でのリズムの良さが,最終的な局面に持ち込めない。


 こうなると,リズムを失ったときのダメージが大きい。


 「取れるときに,取っておかないと」という話を,忠実にトレースしてしまうわけです。


 前半終了をにらむべき時間帯に,最悪と言うべき形で追加点を奪取され,リズムを失う。ハーフタイムを挟んでも,心理的な悪影響からは逃れられなかったような印象を持ちます。それほどまでに,後半立ち上がりからのチームはどこか重く,相手のフットボールを「受け続けて」しまったように感じられます。


 戦術交代によって,リズムチェンジを図ろうとしても,チーム・バランスが崩れてしまった状態のまま,そのバランスを回復させることができない。2009スペックのフットボールは4を基盤とし,連敗脱出後はシングル・アンカー的にセントラル・ミッドフィールドを構えさせ,CBとのコンビネーションで守備バランスを取る,という形を狙っていたはずだったのですが,心理的に追い込まれていたからか,やはり「3」を感じさせるパッケージへと変化してしまっていました。さらに,前半はサイドへと相手守備ブロックを引き寄せることができていたにもかかわらず,後半はほぼ相手守備ブロックを効果的に揺さぶれていなかった。ネガティブな意味でのポジション・フットボールになってしまっている時間帯が多くなってしまっていたような印象です。


 ・・・端的に言ってしまって,「もったいない」ゲームでした。


 失点の局面ももったいないし,ゲームの入り方も,もったいない。自分たちから,リズムを勝手にリズムを手放し,さらに崩れていったような印象を持っています。
 もちろん,あまりに不安定だったレフェリングも作用はしているはずです。ただ,そんなレフェリングも含めて,フットボールであることも,また確かです。


 心理的な優位性を保ちたければ,立ち上がりで後手を踏まないこと。レフェリングが不利に作用しようと,ハーフタイムで前半のポジティブなイメージを増幅させていくこと。追い込まれた状態だからこそ,パスに意図を徹底的に込めること。


 「勝ち点3」を引き換えにしたレッスン。リーグ終盤戦に加速態勢を築きたいのであれば,ベーシックなレッスンだとは思いますが,大事にしてもらいたい,と思います。