等々力と国立霞ヶ丘。

残念なこと,ではありますが。


 陸上競技場としての役割は,(改修計画が具体的に動き出していない現状においては,という留保条件が付いていますが)実質的に終えているということでしょう。


 最新鋭の第1種ですと,9レーンが用意されます。国立霞ヶ丘はかつての第1種ですから,1レーン足りません。


 加えて大きな問題は,サブトラックが「ない」ことです。東京体育館にある,小さなトラックをサブトラックとして公認を受けていた時期もあったようですが,東京体育館にあるトラック&フィールドは,いささか小さすぎる。


 であれば,トーナメントを開催するという道は閉ざされている,と。


 実際,横浜国際へと移転した,はずでした。でしたが,今度は「あまりに大きなハコ」である,という問題を抱えてしまった。そこで,「雰囲気のいい」陸上競技場を,とJAAFは考えたのでありましょう。


 そして導かれたのが,等々力での開催であります。サブトラックもしっかりしたものがあるし,キャパシティがちょうどいい。そして,昨季の成功を受けて今季も,となったのでしょう。


 結果的に,そのあおりを受けた形となるのが,川崎であります。


 こちらの記事をもとに,ちょっと徒然に。


 物理的な距離だけを思えば,それほど遠くにある競技場ではないでしょう。


 「実質的なホーム」という雰囲気を作り上げることも,できるだろう,と。


 でも,「実質的な」という形容詞を外すことは,不可能です。やはり,「中立地」という印象はどこかに付きまとうはず。かつてのガンナーズを追い掛けていたひとたちも,そんな思いを持っていたかも知れない,などと思います。


 アシュバートン・グローブではなく,ハイブリーに本拠地がおかれていた時の話です。


 ガンナーズは欧州カップ戦の時だけ,オールド・ウェンブリーを使っていました。


 確かに,ウェンブリーは雰囲気を持った競技場です。「古色蒼然」という言葉が相応しく映る,そんな競技場ではあったけれど,それだけに「聖地」という表現が自然に感じられる競技場でした。ロンドンにある,という意味ではウェンブリーも「実質的な」本拠地でもある,と考えたかも知れません。知れないけれど,ウェンブリーはウェンブリーであって,決してハイブリーではない,というのも確かなことです。そして,ガンナーズは欧州カップ戦で不思議と存在感を示すことはできなかった。


 ・・・さて,川崎でありますが。


 ガンナーズとは,明らかに立場が違う。積極的に国立霞ヶ丘を選んだ,のではなく,JAAFからの先約が入っていて,仕方なく国立霞ヶ丘を「ホームとせざるを得ない」のだから,同じように思う必要はないだろう,と。


 むしろ,全面改修という道筋が見えはじめた等々力,その改修にあたってJAAFへの交渉材料が増えた,と思っておくくらいがちょうどいいのではないか,と感じます。JAAFにとってもいい雰囲気を持った競技場であるならば,改修にあたってしっかりとした協力を,と“プレッシャー”を掛ける,そのきっかけである,程度に思っておけばいいだろう,と感じるのです。