対山形戦(09−25)。

4のはずなのに,3のような守備応対。


 3を基盤とする時期が長かったわけですから,意図せずとも4の守備応対がピッチに表現できるには,まだ時間が掛かるかも知れません。


 課題となる部分が消えている,とは言えません。対戦相手によっては,鋭く突かれることをも想定しておかなければならない,課題も残っているように思います。


 とは言え。攻撃面でイメージが取り戻せた,という部分もあるか,と思います。さらには,イメージの微調整が掛かってきた部分もあるか,と思います。その結果として,「勝ち点3」を奪取することができた。潰すべき部分を着実に潰しながら,このゲームで表現できたポジティブな要素を,しっかりとチームの約束事として高めていく。そのきっかけとして,決して悪くないリーグ戦のリスタートだったと思います。


 まいど(以下省略),の山形戦であります。


 今節のパッケージは,どちらかと言えば4−3−3だったでしょうか。


 今季,浦和が主戦とするのは4−2−3−1,とは思うのですが,アタッキング・ミッドフィールド,と言いますか,ウィンガーの位置はトップとの距離感であったり,攻撃ユニットとしての流動性を意識してか,もうちょっとだけ高めだったように受け取れました。また,ミッドフィールドの3も,相手ゴールを頂点とする三角形という時間帯だけでなく,逆に自陣ゴールを頂点とする三角形として構成する時間帯も見受けられるなど,「流動性」にこだわってゲーム・プランを描いてきているように感じました。


 実際,攻撃ユニットの流動性はある程度確保できていたか,と思います。


 パッケージとしてのポジション・バランスに配慮しながら,同時に相手守備ブロックに対してマークを限定させないように,ゲームの流れの中でポジションをスライドさせ,ボールを引き出していく,という形がある程度表現できていたか,と思うわけです。


 そして,ステーションが機能する時間帯が出てきていること,ステーションからパスを引き出し,さらにスペースへと抜けていく動きが見える局面が出てきていることは,今節における収穫,と言えるかも知れません。ボールを収めてからの単純なボール・ロストが抑え込まれたことで,縦パスからリズムを生み出す,という形が出てきた,という印象ですし,縦パスをコントロールしている選手と,そこからボールを引き出そうとする選手の動きをつなぎ合わせられるだけの距離感を今節は維持できていたことで,相手守備ブロック背後をユニット,と言いますか,コンビネーションによって狙うという姿勢が表現できるようになった,という印象を持っています。


 また,パス・ワークに意図が伴う時間帯が戻ってきたこと,も収穫でありましょう。


 フリーラン,という要素とも関わってきますが,チームが悪循環に嵌り込んでいた時期は,ボール・ホルダーの視界に積極的に入っていくようなフリーランを仕掛ける,というよりも,ネガティブな方向性でのポジション・フットボールになってしまっている時間帯が多かったように感じます。ボール・ロストから鋭くカウンターを仕掛けられてしまっている,という意識がチームの心理面を拘束してしまっていたのか,どうしてもセイフティに(足元へ),というパス・ワークに傾いてしまっていたがために,相手守備ブロックを揺さぶれなかった。また,チームとしてどういう攻撃を仕掛けるのか,という意図が,この時期のパス・ワークは希薄化してしまっていたように思うのです。時期的な問題も重なって,チームが表現すべき機動性が大幅に落ちていた,流動性を作り出していた選手が掛けた,などの要因が悪循環を深めていた,とも。


 そして,戦術的な「微調整」が掛かったのではないか,と感じる部分ですが。


 今節は,攻撃リズムをどのように組み立てるのか,であったり,どのようにゲーム・コントロールをしていくのか,という戦術的な意図がパス・ワークから受け取りやすかった,という印象を持ちます。ダイレクト・パスをリズミカルに繰り出しながら相手を揺さぶる,という戦術イメージだけがシーズン当初は強く意識付けられていたような印象ですが,今節はボール・ホルダーがある程度の「時間」を使ってパス・コースを狙っていたように感じますし,パスを引き出す側も単純にポジションを動かずにパスを受けるのではなくて,つくられた「時間」を利用してポジションを動かす,あるいはパスを預けた先の動きを意識した動き出しをしながらパスを繰り出す,という姿勢が見えはじめているように感じました。


 それだけに,パス・レンジが広がっていたように感じます。


 ショートレンジ・パスだけでなく,ミドルレンジ・パスであったりを効果的に織り込めるようになっている。スペースを狙うという意識と,パスで相手を崩すという意識がバランスして来つつある,という印象を受けました。


 とは言え,課題もあるな,と。


 冒頭にも書きましたが,守備応対が4を基盤とするものではなくて,3を基盤としているときの守備応対になってしまっていること,です。


 サイドの上下動が,守備組織を整えるタイミングに合っていない。そのために,CBがスペースへのカバーリングに入るためにサイドへと流れざるを得ない。当然,センターでのバランスを崩すことになります。バランスを整えようとすれば,どうしても反対方向のSBが3バックのポジションにまで絞らないといけない,という意識になってしまうし,実際に絞ってしまえば,物理的にスペースを潰せるはずの4を使っていながら,3のウィーク・ポイントでもあるスペースを提供することになってしまう。


 いささか大ざっぱな言い方をすれば,意図しないでチーム全体がひとつの方向に旋回してしまったまま,その旋回を戻せずに守備応対に入ってしまっているような時間帯があった,と感じるわけです。


 また守備応対の初期段階,チームとしてのファースト・ディフェンスがまだ不安定という印象も残っています。1on1での弱さが,リズムを崩す要因になっていたのは確かです。パスを収めた直後にボール・コントロールを失うことで,チーム・バランスが崩れたタイミングで相手の逆襲を受けることになる。そうならないために,「個人としての」ファースト・ディフェンスは確かに重要な要素となります。なりますが,組織的なファースト・ディフェンスというイメージが明確とは言いがたい。チェイスに対するサポートが,チームとして描き切れていないような印象を受けるわけです。


 チームとしてエリアでボールを奪うのか,という戦術イメージが不明確だから,どの位置にいる選手がサポートに入るのか,どのように相手ボール・ホルダーに対する数的優位を構築するのか,という部分で不明確さを残す時間帯がありました。となると,不必要にボール奪取位置が上下動してしまうことになる。ボールを奪うエリアを高めながら,攻撃を仕掛けはじめるポイントを上げていく。そのときに,距離感を悪くする要因として,チームとして徹底していていいはずのボール奪取位置,その不明確さがあるように思うわけです。


 チームのどのゾーンで,相手からボール・コントロールを奪い返すか。守備に対するイメージが固まってくると,課題をクリアする具体的な道筋が見えてくるのではないか,と思います。


 ・・・「勝ち点3」を奪取できたことが,大きな収穫。


 その通りではありますが,まだチームは不安定さを持ってもいます。その不安定さは,イメージの不明確さに起因しているところもありましょう。約束事,とも言えましょうが,その約束事が徹底できていない部分が残っているように感じられます。攻撃面では,トップとウィンガー,セントラル・ハーフとの流動性は一定程度表現できているし,イメージも固まりつつあります。けれど,ウィンガーとサイド,セントラルとサイドがどのようなコンビネーションで攻撃を組み立てるか,ちょっと不明確な部分が残ってしまっています。そのために,ポジショニング・バランスが崩れる時間帯もあります。


 そのときに,守備への切り替えを,となると,どうしても3のイメージが出てしまう。4でできる時間帯を増やすこと,そのためのイメージ構築を,と思います。