米子北対静岡学園戦(GL#1・高円宮杯2009)。

どうしても,軸足を意識してしまうので,「虚心坦懐」というわけにはいかないけど。


 高円宮杯はいろいろな個性に触れることができる,というのが大きな魅力だと思います。選手権,という大きな目標があり,どうしてもフットボールが似たような方向性へと収斂しがちだった時期を過ぎて,高校チームもある程度,バラエティあるフットボール・スタイルを志向するようになってきています。


 大宮公園でのゲームも,例外ではなかった,と思います。ということで,第1試合のことについてもちょっとだけ。


 まずは,米子北についてですが。


 彼らの戦術パッケージは,スタンド上方から見る限り,4−4−2フラットであるように受け取れました。パッケージが持っている物理的なメリットを生かし,守備的な安定性を基盤に据える。最終ラインへとボール・ホルダーを追い込む,と言うよりは,ボール・ホルダーを追い込むポイントを緩やかに引き上げながら,ボール・コントロールを奪うとシンプルに攻撃を繰り出す,という方向性を狙っているように見えましたし,そのゲーム・プランは相当程度に表現できていたように思います。
 攻撃を組み立てる,その手数は必ずしも多くはありません。細かいパス・ワークから攻撃リズムを作り出す,と言うよりも,シンプルに縦を狙った攻撃を意識していたようです。そして,早い時間帯で先制点を奪取すると,26分の段階で追加点を奪い2−0でハーフタイムを迎えます。さらに後半にも追加点を挙げるなど,効果的に攻撃を繰り出していたな,という印象を持っています。


 対して,静岡学園でありますが。


 試合のリズムを掌握していながら,フィニッシュという要素が足りなかった。と言いますか,フィニッシュへと持ち込む局面がそれほどつくれなかった,という印象を持っています。
 パス・ワークを基盤にしながら攻撃を組み立てる,という静学のフットボール・スタイルは確かに表現できてはいましたが,米子北は攻撃リズムが変化する前段階でパス・ワークを切りに来ていましたし,実際に攻撃が寸断される局面も多かった。そのために,米子北の後手を踏む結果となってしまったのは,いささかもったいなかったと感じます。
 さらに,数的不利の状態に陥ってもいます。個人的には,数的不利がギアチェンジとして機能するか,と感じていたのですが,実際には攻撃リズムに大きな変化はありませんでした。それだけ,自分たちのフットボール・スタイルへの確信を深く持っている,とも言えるでしょうが,短期のカップ戦ではある程度,戦術的な微調整を柔軟にできるといいのでは,などと感じました。


 ・・・好対照をなす,高校チーム。


 ファイナル・スコアを取り出すと,その明暗はあまりにハッキリと分かれてしまったのですが,「個性のぶつかり合い」という部分ではすごく興味深いゲームだったかと思います。


 彼らと,浦和ユースは第2戦,そして最終戦で対戦することになります。最後にちょっとだけ,「偵察部隊」的な見方をするならば。
 第1戦で対戦した,FC東京U−18と米子北はどこか,戦術的に相似性を感じさせるところがありますから,スカウティングから導かれる要素,そしてFC東京戦に向けての意識の再確認が効果を生むか,と感じます。対して静学は「回して」リズムを作るチームです。となると,中盤でどれだけボール奪取勝負を挑み,その勝負に勝てるか,が大きな要素になるかな,と感じます。