FC東京U−18対浦和レッズユース戦(GL#1・高円宮杯2009)。

武蔵野苑での,プリンスリーグ第10節。


 「後手を踏む」,と言うよりも後手を踏み続けたゲームだったように思います。


 自分たちが攻撃を組み立てていこう,とするタイミング。ここからボールを展開して,という局面で相手のプレッシングに引っ掛かる。
 ボールを奪われたあとの対応,という部分でも,後手に回った印象がありましたが,どこか1on1の局面で相手に押されてしまっているような,そんな印象を持っていました。


 局面での弱さが影響して,自分たちのフットボールへと引き込めなかった。ファイナル・スコアとしては,大敗以外の言葉が見つからなかったゲームですが,チームにとっては大事な要素を確認するために,大きな意味を持っていたか,と思います。


 自分たちのフットボールを表現するためには,1on1での勝負を厭わないこと。
 ボールを奪われたとしても,組織で奪い返すという意識を保ち続けること。


 そして,同じ相手とグループリーグ初戦で対峙することになった。めぐり合わせだな,と思いますし,自分たちがどれだけチームとして熟成度を深めてきたか,望むべくもない相手でチェックできる,と感じていたのではないかな,と思います。


 大宮公園での,高円宮杯であります。
 ノン・プロフェッショナルのゲームでありますし,双方を軽く見ておくことにします。


 まずは,対戦相手に敬意を払い,FC東京U−18でありますが。


 ミッドフィールドでのプレッシングが機能すると,確かに怖さを持った攻撃であります。
 ボール奪取位置を組織的に引き上げていくと同時に,縦方向に鋭い攻撃を仕掛ける。
 手数をかけて攻撃を組み立てる,というよりは,エリアを巧みに奪いながら手数を少なくフィニッシュに持ち込もう,という意識が,相変わらず徹底されているな,と感じました。


 が,プリンスの段階と違って,FC東京がボール奪取で主導権を掌握していたか,と言えば,それほど大きく主導権を掌握していたわけではない,と思います。


 先制点奪取の局面はなかなかに鋭い攻撃を仕掛けていた,と思いますが,浦和が意外に球際を厳しく仕掛けてきていたところもあって,形に持ち込みきれなかった部分もあるか,と思います。


 FC東京が狙う,「形」に持ち込ませなかった。レッズユースを評価すべきは,まずはこの部分かも知れません。ということで,レッズユースについて見ていきますと。


 自分たちの形で攻撃を仕掛けられる時間帯が増えている。


 その基盤として,ボール・コントロールを嫌な形で失うことが少なくなった,ということがあるかな,と思います。そして,ボール・コントロールを失ったとしても,失った直後からの対応に組織的な粘り強さが表現できていたのではないかな,とも。


 相手が採用するパッケージは,4−4−2フラット。エリアでの数的優位からボールを奪う,という意識を徹底していることを端的に表現するかのようなパッケージです。
 このパッケージに対して,戦術的な調整を施す,というアプローチをしてはきませんでした。浦和ユースと言えば,になっている(と思っている)4−3−3パッケージを変えることなく,ボールが奪われたあとの組織的な対応,そして攻撃している時間帯では攻撃を完結させる,という意識を徹底させてきたように思います。そのためか,立ち上がりからの印象は静かなようで,1on1での厳しさが感じられるものでした。


 プリンスでは,リズムを崩す大きな要因となった相手のプレッシング。


 このプレッシングに対して,退かない姿勢を押し出し続けられたことで,自分たちのリズムで攻撃を組み立てられる時間帯ができている。ラグビー用語なので,本当は適切ではないかも,なのですが,「接点」での強さで相手のストロング・ポイントをひとつ,抑え込むことができたように感じたわけです。
 また,ボールを失ってからの対応を,「ユニットで奪い返す」という方向性で束ね上げたことで,戦い方を安定させられたように受け取れました。


 ボール・コントロールを失う局面も,当然ながらにあります。このゲームでは,そこからの対応がかなり安定していたように思うのです。相手の攻撃をセンターで受け止める,と言うよりは,ボール・ホルダーをサイドの狭いエリアへと追い込み,そのエリアで数的優位をつくるところからボール・コントロールを奪い返す,という形を多くつくっていく。攻撃を組み立てはじめる位置はちょっとだけ低くはなるけれど,守備面での安定性を確保していたような印象を持っています。


 さすがに,先制点を奪取された直後の時間帯は,相手のフットボールに乗りかけたかのように見えました。縦に鋭い攻撃を真正面から「受けて」しまったかのように。
 ただ,このゲームでの彼らは,悪いリズムをこの時間帯だけで断ち切ることに成功しています。


 相手に傾きかけたリズムを引き戻し,ゲームをイーブンへと持ち込む。追いついた,という意識がチームにポジティブな影響をもたらしたはずですし,リズムをさらに引き寄せるきっかけとなったはずです。そして,アディショナル・タイムに「勝ち点3」を引き寄せるゴールを奪う。


 ・・・軽くと言っておきながら,相変わらず軽くないのですが。


 初戦にして,相当な難敵であることは間違いなく。その難敵を相手に「勝ち点3」を奪取できた,というのは大きな要素であります。


 さて,最後にちょっとだけ。


 ノン・プロフェッショナルのゲームであるはずなのですが,プロフェッショナルのような意識で大宮公園へと足を向けた方が,どうも見受けられたような。浦和サイドのスタンドにもおられたようですし,FC東京サイドにあっても,やはり似たようなスタンスのひとがおられたようで。もちろん,ネガティブな意味で,です。


 レフェリングに対するヤジであったり,プレーに対するヤジであったり。


 レフェリングの不安定さは確かにあったけれど,それとこれとは違う話。
 下部組織はあくまで下部組織であって,プロフェッショナルではない。クラブの看板を確かに背負ってはいるけれど,プロフェッショナルとしてボールを蹴っているわけではない。プロフェッショナルのゲームであっても,シャレの効かないヤジは歓迎できませんが,もっと目の前のフットボールを楽しんでほしいと思います。