450psのRS。

3800ccの自然吸気で,450psを発生する。


 電子制御が入っているとしても,失礼がないようにスロットルを操作しないと,と身構えるに充分なパワーです。しかも,最高回転数が8000rpmに届こうとする。排気量を思えば,驚くほどに高回転型のエンジンを搭載していることになります。日常使用も可能なモデル,というアナウンスがありながら,スペック・シートはレーシングな雰囲気を強く漂わせるものです。


 ウィークエンド・レーサーと言いますか,クラブマン・レーサーとして,ひとつの完成形ではないか,と個人的には思います。ということで,今回はwebCGのニュース記事をもとに,屋号な話をしてみようと思います。



 GT3をさらに軽量化したスペシャル・モデル,“RS”であります。“Renn-sport(ドイツ語で言うところのモータースポーツ)”というその名前が示すように,サーキットを強く意識したモデルであり,ナロー・ポルシェの時代から設定されてきてもいます。ただ,ナロー当時はRSをベース車両にするというエントラントはそれほど多くなく,廉価版として設定されていたTがベース車両としての位置付けだったと聞きます。
 むしろ,純粋なレーシング・マシン,そのベースとしての位置付けだったような印象を持っています。その血統は,現代においても受け継がれていると思いますが,仕立ては高級なクラブマン・レーサーとしての位置付けを強めているようです。


 レース・トラックに軸足を置くとすれば,もうちょっと本格的なバケットを。やはり,同じジャーマン・メイドのレカロが気分でしょうか。それと,フル・ハーネスを装備しておきたい。もともとのシートベルト,そのカラーリングに敬意を表すれば,サベルトやシンプソンが有力な候補でしょうね。


 恐らく,その程度のモディファイで本格的なレースにこのマシンを持ち込むことができるのではないか,と思うほどのロール・ケージが組み込まれています。しかも,Aピラーからルーフに施されたパディングは,視覚的な違和感を抑え込むためか,緻密に「デザイン」されています。
 シフト・ノブやステアリング・ホイールにはバックスキンが採用されていますし,ルーフは恐らくアルカンターラ(人工スウェード)が使われています。単純に軽量化を施すのではなくて,相当に刺激的なプライス・タグ,その額面を納得させるだけの高品質感を持たせているな,と感じさせるところです。


 ・・・エコロジカルであること。


 そういう観点から言えば,「究極のムダ」とも言えるかも知れません。知れないけれど,クルマが持っている「らしさ」を端的に表現しているとも思うのです。すべてがこんなクルマでは,確かに困ってしまいますが,エコであろうとしてかえってクルマの本質から離れてしまっても,それはおかしな話ではないかな,と感じます。効率性を重視するヒコーキがあると同時に,アクロバットなど,ただ「飛ぶ」だけの機能を突き詰めたヒコーキもある。そういう幅が,クルマに残されていてもいいだろう,と。
 自転車,特にロードレーサーのように,ただ「走る」ことだけにすべてを集中させたクルマというのも大事な存在だと思いますし,こういうクルマを大事に作っているポルシェというメーカはそれだけでも価値がある,と思うのです。