ワイルドカード・トーナメント。

6から4+2への変更,であります。


 もちろん,「結果として」6であることに違いはありません。6に行き着く過程を変えるわけであります。であれば,“+2”が持つ意味に注目したいと思います。


 今回も,楕円球方面な話をこちらのニュース・リリース(トップリーグ・オフィシャル)をもとに。


 ラグビー日本選手権への切符を,どう配分するのか,という話であります。


 昨季は,6位までのクラブに「自動的に」配分する形を取っていました。
 今季は,ワイルドカード・トーナメントというミニ・カップ戦を導入,10位までのクラブに日本選手権出場の可能性を持たせる,という形に変更したわけです。つまり,リーグ戦では加速態勢をつくりきれずに10位というポジションに甘んじることとなったクラブであっても,2ゲームの真剣勝負を制することでタイトルへの挑戦権を手にすることができる,という形へと変わったのです。


 この2ゲーム,意外に大きな意味を持つかと思います。


 トップ・リーグは1回戦総当たり制を採用しています。2009〜10シーズンで考えると,実戦機会は13に限られる,とも考えられるのです。
 それでも,上位のクラブはある意味,密度の濃い13ゲームになるでしょう。ラグビーフットボールではボーナス・ポイントという要素もありますから,ロースコアに抑え込まれてゲームを落とす,などということがあると,順位に大きな影響を与えかねません。自分たちが構築してきているラグビー・スタイルは当然の要素として,ゲーム・コントロールという部分で巧みさを持っていないと,プレーオフ・トーナメントへの切符を奪取するのは難しい,と思うのです。
 ゲーム・コントロールを徹底していく必要があるのは,下位を余儀なくされるクラブも同様でありましょう。サンゴリアスはゲーム・コントロールという要素を,スカウティングを通じて戦術面に落とし込んでいくクラブですが,その必要性がより強く求められることになる,とも言えるでしょうか。
 TLは自動降格制度を採用していますから,自分たちが構築してきたラグビー・スタイルに拠って立つ,というだけでなく,相手のラグビーをどれだけ効果的に抑え込むか,という要素とラグビー・スタイルとのバランスも求められてきます。これはこれで,厳しさを伴う実戦機会でしょう。


 長期とは言えないリーグ戦ではありますが,上位,下位にはリーグ戦のシビアさがあります。となると,中位は,ということになります。
 その中位に対して,新たなモチベーションとなりうるトーナメントではないか,と思いますし,相手に対する徹底したスカウティングを基盤とするゲーム・コントロール,という要素も求められることになるでしょうから,相当にシビアなカップ戦となるはずです。5位,6位というポジションを確保したクラブにとっては,2008〜09シーズンのレギュレーションだったら,という思いも出てくるかも知れませんが,7位から10位というポジションに入ったクラブ,特にリズムを崩したことで中位へとポジションを下げたようなクラブならば,このチャンスを生かそうというモチベーションは相当に高まるはずです。
 昨季のリーグ・テーブルを見てみると,選手権への切符を奪取できなかったクラブに,有力なクラブの名前を見つけることができます。彼らが甘んじたポジションで,今季は2試合のチャンスが与えられることになるのです。


 この2試合はクラブに好影響をもたらしてくれるのではないか,と感じますし,トップリーグ・サイドの決定を歓迎したいと思います。