対清水戦(09−20)。

思うに,小さなズレ。


 指揮官は,「穴に嵌る」という表現をしました。


 相手も,新たなフットボール・スタイルに対して,対策を立ててきます。相手のスカウティングに対して,戦術的にどのような上積みをするか。そんな段階で穴に嵌り込んだ,と言いますか,壁に直面した,と。


 とは言え,今節は複雑にズレが折り重なって,という状態ではなかったと思います。小さなズレが,最終的な局面での窮屈さをつくってしまったような印象です。


 「形」を描く,という部分で,チームの方向性は揺らいでいない。それだけに,「勝ち点」という裏付けがほしかった。フットボール・スタイルへの確信を深めていく,その足掛かりとして。


 まいど1日遅れ,の清水戦であります。


 スタンディングを基準に言うならば,首位に立つクラブとの差を詰める好機だったのですから,どうしてもポジティブな評価はできないでしょう。ではありますが,ネガティブな要素だけがあったゲームだとは感じていません。


 「穴」から抜け出すきっかけをつかみかけているのかどうか,振り返ってみることにしたいと思います。では,数字な話からはじめていきますと。


 静的には4−4−2ウィング,に近いパッケージです。動的には,4−2−3−1的な時間帯も結構多い,と。基本的に,今季の主戦パッケージであります。


 ただ今節においては,左右両翼で4−4−2的な時間帯が多いサイドと,4−2−3−1的な時間帯が多いサイドとに分かれていたようです。


 次にゲームの流れを大ざっぱに。


 立ち上がりの時間帯から,比較的安定してビルドアップしていた,という印象です。相手守備ブロックに攻撃を寸断され,縦にシンプルな仕掛けを受ける,という形も比較的抑えられていた。ハーフタイムを挟んで,後半立ち上がりも,相手にリズムを抑えられるようなことはなく,比較的しっかりとした立ち上がりを見せてはいました。


 それだけに,失点の局面はもったいなかった。


 リトリートを基盤とするフットボールではないだけに,ミッドフィールドでのアプローチが不安定さを見せはじめると,最終ラインの守備応対も引きずられるように不安定になってしまいます。大ざっぱに言うならば,「戻りながらの守備応対」になりがちなのです。ゾーンに対する意識を払いながら,同時に潰しにも入る必要性が出てきます。かなり厳しいバランスで守備応対を強いられることになり,そこでミスが発生してしまうとどうしてもクリティカルな形に持ち込まれる,と。


 今節もこのような形に嵌り込み,結果として,この失点がゲームを決定付ける失点となってしまったわけです。


 ・・・結果ベースで見れば,ポジティブな評価はなかなか難しいゲームです。


 でありますが,「変化」が出てきたゲームだと感じてもいます。まずはアウトサイドでありますが,物理的な数的優位を,ビルドアップに生かすという意図が見やすくなった。アタッキング・ミッドフィールドとトップが流動性を意識しながら攻撃を構築する,という方向性を意識付けている,という背景もあると思いますが,局面ベースで構築できる数的優位が,必ずしもコンビネーションという形に結び付かず,スモール・フィールドを通り越してちょっと窮屈な距離感でのパス・ワークになる,という形もありました。そのバランスが,落ち着きつつはある,と感じます。ダイレクトにパスを引き出す,そのための距離感は維持されているものの,決して近すぎる距離感にまでは行っていなかった,との印象を受けます。また,左翼ではアタッキング・ミッドフィールドとSBがコンビネーションで相手に仕掛けていく,という局面も見えてきた。右翼はアタッキング・ミッドフィールドが流れてきたときと,トップがアウトサイドに開いてきたときとでコンビネーションの形が微妙に異なる,という部分がピッチから感じられ,コンビネーションの形も複雑になっているようです。


 攻撃ユニットが持つ流動性と,左右両翼とのバランス。今節において,最適解が導き出せているわけではありませんが,解法へのきっかけはつかめたのではないか,と思います。また,仕掛けるタイミングをつかみかけていることでしょうか。


 今節は,そのタイミングがちょっと遅い,と言いますか,仕掛けていくエリアが深くなりすぎる局面があって,そのためにフィニッシュにつながる攻撃が窮屈なエリアに入り込んでしまう,という課題も出ています。手数がちょっと多めになってしまっているために,フィニッシュ直前の攻撃にもうワンステップが必要になってしまう。仕掛けていくタイミングが早まれば,手数のバランスが調整されるはず,という感触がありますが,少なくともリズムを変えてフィニッシュへ,という意識がピッチに表現される時間帯が見えてきています。


 パス・ワークでどこまで相手守備ブロックを揺さぶるか,という部分と,揺さぶった相手ブロックを断ち割っていくタイミングと。そのバランスが「パスで崩す」という方向性に強く傾きすぎて,結果として相手守備ブロックの網に掛かっていたのがここ数節の形ですが,網を切り裂くきっかけ,のようなものは(相当に時間帯が限定されてはいたわけですけど)つかめたかも知れません。ここからのショート・インターバルで,このゲームでの課題,そして収穫を整理して,リフレッシュした状態でアウェイ・マッチの多い8月を乗り切ってほしいと思います。