#8。

浦和にとっての「8番」は,ちょっとイメージが違っていたような気がします。


 2005シーズンまでは,と言うべきでしょうけれど。


 浦和は「10番」というイメージを持った選手が,必ずしもイメージ通りに10番を背負ってはいませんでした。むしろ,“ストライカー・ナンバー”だった時期もあるくらいです。


 ほかのクラブならば,10番を背負っているかも知れないタイプは,「8番」を背負っていた。そんな意識を持っていたからか,「8番」を,という話を聞いたときには,ちょっとした違和感を持ったりもしたのでした。


 主戦場が違うのだから,そのエリアに相応しい番号もあるのではないか。


 正直なことを言えば,そんなことを思っていました。
 ただ,それほど長続きする違和感でもありませんでした。主戦場とするエリア,そのエリアでの存在感が,違和感を消し去っていったと思うのです。そして存在感の裏にあっただろうこだわりが,「8番」に示されていたのでしょう。


 相手との間合いを詰めるときの,独特なリズムを刻むステップ。フェイント・モーションが意外なほどに大きくて,ボール・コントロールを失ってしまうのではないか,などと思うこともあるのですが,強く踏み出す一歩でしっかりとボールを支配下に置き続け,相手のマークを振りほどいていく。


 そして,正確なクロスを繰り出していく。


 8番は実質的な10番を意味する番号ではない。アウトサイドを意味する番号が「8番」である,と自ら書き換えてみせた,と感じています。


 できるならば,その存在感を新たなフットボール・スタイルの中でも。


 そんな思いを持ってもいましたが,残念ながらそうはいかなかった。


 “アレックス”というフットボーラーは,まだ“インディアン・サマー”なんて言葉には早すぎると思っています。フィジカルでは,ピークを過ぎつつあるのかも知れないけれど,経験から導かれる戦術眼はこれからが熟成の域,だと。


 これからは,アウトサイドで「攻略すべき相手」に変わる。


 円熟味を増すであろう壁に対して,どれだけ浦和のフットボールが組織的に対峙できるか。フットボール・フリークとしても,そして浦和というクラブを追いかけている立場としても,楽しみにしよう,と思っています。