4−4−2フラットなレディース。

キックオフ・タイムは午後3時。時期的に,厳しい時間帯です。


 駒場を特徴付ける,かつてのエンブレムを思い出すライト・ブラケット。そのブラケットに付いているフラッドライトを使うとしても,影になるエリアでの違和感を軽減するために使う。そんな時間帯だったのですが,実際にはフラッドライトがピッチ全体で役に立つような,そんなコンディションでした。


 土曜日の午後,駒場での話であります。
 時期も外していますし,継続的にレディースを追い掛けているわけでもありませんので,フットボール・フリークがフットボールを見た,その雑感程度に収めておこうと思います。


 では,対戦相手であるベレーザから印象を書けば。


 主導権を掌握している,と言いますか,ゲームを巧みにコントロールしている時間が長かったのは,彼女たちでしょう。
 ビルディング・アップを基盤にエリアを奪う,という攻撃面からのゲーム・プランではなくて,どのように仕掛けを抑え込むか,という守備応対面からゲーム・プランを組み立て,攻撃面は縦方向への揺さぶりをベースに仕掛けていく,という形だったかと思われます。


 浦和は,チームをコンパクトに,という意識を強めていたはずですから,最終ラインも高い位置で構える時間帯が多くあります。その背後に生じるスペースを狙う,という意識でゲームを進めていた,という印象であります。その仕掛けは,確かに「脅威」でもありました。


 対して,浦和でありますが。


 かなりコレクティブなフットボールを狙っているな,という印象を持ちました。また,リアリスティックなフットボールで勝負に,というのではなく,あくまでも主導権を掌握する形で相手ゴールに迫っていく,という姿勢を押し出し続けていたようです。
 このゲーム,個人的に見る限りパッケージは4−4−2。しかも,ミッドフィールドの構成はボックスでもなくダイヤモンドでもなく,ほぼフラットに近い時間帯が多かったように感じます。


 4−4−2フラット。


 国内リーグ戦ですと,三浦さんが率いていた時期の大宮に代表されるように守備面を意識したパッケージ,と理解されがちです。ではありますが,実際にはマンチェスター・ユナイテッドも4−4−2フラットを採用しているなど,必ずしも守備面だけを意識したパッケージではありません。いつだったか,ある監督がフォーメーションに関するコメントをメディアにしていましたが,4−4−2フラットというのは,ひとつの方向性として,誰しもが持つフォーメーションでもあるようです。
 攻撃面,そして守備面において物理的な数的優位を構築しやすくするために採用されたパッケージ,でありましょう。であれば,チームをコンパクトに,という意識も理解できるところです。


 ただ,相手は中盤でのボール奪取で,真っ向勝負を挑みはしなかった。むしろ,守備ブロックの安定性を意識することで守備応対を組み立て,戦術的なイメージをカウンター・アタック方向で束ねてきていました。そこで,戦術的なミスマッチが生じ,ポゼッションという部分を抑えてはいるのだけれど,ゲームの主導権という部分ではともすれば,相手にコントロールされているような印象をも受ける。


 ファイナル・スコアだけで言うならば,ファースト・チームと同じ。2−1,であったわけです。
 少ない好機を確実にフィニッシュへと結び付けた,という部分も含めて,意外なほど相似形なゲームだったかも知れません。ただ,チームの狙うフットボール,その表現度という部分ではレディースはかなりしっかりと表現していたのではないか,という印象を持ちます。


 自分たちのフットボールにこだわることで,結果として相手の描くプランに乗りかけた,という見方も成り立ち得るかも知れません。ただ,「矜持」をかけたゲームであればなおのこと,数字から逆算したリアリズムではなくて,「形」を押し出した,とも見られようか,と思うところがあります。
 「形」を誰が相手であろうと貫く,という姿勢は評価していいと思いますし,裏付けとしてどれだけ実効的なリスク・マネージメントができるか,という要素があれば,決して無謀なチャレンジではないかも,と思ったりします。