対広島戦(09−17)。

論理的,とは言いかねる「効果測定」ですけれど。


 「勝ち点3」というリードタイムを得た,と考えればいいでしょう。


 スタンディング首位までの距離を思えば,どうしても「勝ち点3」を基準としてフットボールを考えたくなってしまいます。ですけれど,まだ浦和のフットボールは構築段階です。不安定さを露呈する時間帯も,決して少なくはありません。指揮官も「台所事情」という言葉で説明するように,チーム・コンディションも安定しているとは言いがたい。さらに,ウォーミングアップ・セッションの最中にスターター変更をせざるを得なかった。


 必ずしも,100%ではありません。むしろ,100%からの距離は遠くもある。


 であれば,今節で奪い取れた「勝ち点3」は大きな意味を持つ。そのような印象を持ったりします。


 ということで,いつものように1日遅れの広島戦であります。


 いつものように,ごく大ざっぱな言い方をするならば。


 前半は,「攻めきる」姿勢が中途半端だったような印象を持ちます。


 「ひとりひとり」の意識は,攻撃面に振り向けられていた,とは感じます。ただ,その意識が“コンビネーション”という形に結び付いていない。攻撃面でのリズム・チェンジが組織として作り出せていないから,結果として相手守備ブロックが仕掛けている網に掛かる。


 立ち上がり,ごく早い時間帯では相手の仕掛けをオフサイドで抑え込めてはいました。ただ,相手はスペースを狙う攻撃を徹底していました。静的なパッケージ「だけ」から判断するならば,ウィーク・ポイントとはなり得ないアウトサイドが,現状での浦和が持つウィーク・ポイントであり,そのエリアを突き続ける,という意識を明確に意識付けていたように思います。


 今節,特に前半の戦術パッケージは,静的ベースで見れば4−4−2ウィング。動的ベースに視点を変えると,4−2−3−1的に動いている時間帯が多い,という形です。となると,ウィンガーとSBとの関係性がひとつの鍵になるはずですが,スムーズにポジション・チェンジを仕掛けられる時間帯がそれほど多くはありません。ポジション・チェンジへの意識が,SBとの関係性を含めた意識にまで煮詰まっておらず,“3−1”というエリアに限定された流動性になっていたように受け取れます。シーズン前半では比較的強めに意識付けられていたはずの,「アウトサイドにボールサイドを構築する」という方向性がなかなか表現できず,数的優位を構築するところからリズムを変化させて仕掛けを強める,という形に持ち込めなかった。


 攻撃面で,リズムを変えるタイミングがなかったこと。そのことが,早い時間帯での失点へとつながっていたような印象です。


 この中途半端さを,戦術交代を含めて修正してきたのが後半だったと感じます。


 ひとつには,攻撃面でのメッセージでありましょう。当然,「攻めきる」という意識付けをあらためて徹底する。同時に,守備面ではセンターとアウトサイドのバランスを取り直すことが,意識にあったはずです。センター・ハーフを1列下げてCBのコンビネーション面を見直し,前半でのCBをRSBに回すことで,守備面と同時に攻撃面でRWGとのコンビネーションを狙う,と。


 相手サイドに,大幅に傾いていたリズムを引き戻す。そのきっかけとして,ひとつにはこの戦術交代があったかも知れません。


 もうひとつ。相手が狙っているゲーム・プランで「欠け」が目立ちはじめたこと,でしょうか。


 あまり,論理的な話ではありませんが。


 決めるべきタイミングで決めることができていないと,どんなにいいリズムでゲームを進められていたとしても,一瞬の隙からリズムを譲り渡してしまうところがあるように思います。


 前半から,相手がリズムの基盤としていたのはカウンター・アタックでした。そこで,チーム・バランスを決定的に崩すという局面はそれほどなかった。なかったけれど,追加点を効果的に奪取できていない,という心理面が影響したのか,自然とチーム・バランスがゴール方向へと傾いてきていました。


 その隙を的確に突いたのが,2トップです。鋭くカウンター・アタックを仕掛け,ゲームを1−1という状況へと持ち込む。ゲームを貫くリズム,という部分では,緩やかにリズムを引き寄せはじめた時間帯かも知れません。PKをポストに当てたことで,一時的に追加点を奪取する好機を逸しはしましたが,相手が仕掛けという部分でトーン・ダウンしてきた時間帯に,セットピースから貴重な追加点を奪取,この得点が決勝点となります。


 ・・・思えば,想定外なウォーミングアップ・セッションでした。


 今季のウォームアップは,ランニング・ベースで負荷を掛けるところからはじまります。身体からのシグナルを最終的にチェックする,という意味合いもあるのでしょうか。坪井選手は,そのシグナルを感知した,ということでしょう。


 そこで,リザーブが軽めのアップをこなすエリアから西澤選手が呼ばれる。この段階で,想定していたパッケージが崩れている,とも言えるわけです。前半の,リズミカルという言葉からは程遠いフットボールは,パッケージ面でのミスマッチやミッシング・ピースが与える影響を感じさせるものでもあったか,と思います。


 対して,相手は相当的確なスカウティングをしていたはずです。スカウティングをもとに,ゲーム・プランを組み立て,ある程度の時間帯まではフットボールにそのプランを反映させることもできていた。いたのですが,リズムを決定的に掌握するための「追加点」が奪えない。ちょっとした誤算,かも知れませんが,その誤算がゲームに影響を及ぼしてしまう。


 フットボールという競技は,必ずしも論理的な結論が導かれるわけではありません。ただ,論理的とは言えない結論の裏には,ちょっとしたアヤがある,と感じるのも確かです。今節は,そのアヤが浦和に「勝ち点3」という結果をもたらした。この勝ち点3を,フットボール・スタイルのさらなる熟成へ向けたリードタイムとして,有効に使ってもらいたいと思います。