対神戸戦(09−15)。

ピッチサイドに置かれているスクイーズ・ボトル。


 このゲームでは,明らかにその数が増えていました。それだけ,厳しい時間帯でのゲームだった,と言えるでしょう。当然,フットボール・スタイルにも悪影響を与えかねません。


 今季,ファースト・チームが狙うフットボールは高い機動性と連動性が基盤になります。当然,ひとりひとりのフィジカルが求められることにもなります。そのフィジカルに,影響を及ぼす時期になった,とも言えるわけです。


 課題として,“ゲーム・マネージメント”が提示されつつある時期である。そう位置付けてみると,ひとつの見方ができるかも知れない,と思います。


 まいど1日(以下省略),の神戸戦であります。


 前節は,あまりに急激なスロー・ダウンから相手に主導権を掌握されました。そして,カウンター・アタックから勝ち点を失っています。この課題がどのように修正されるか,がこのゲームでは問われていたように思います。


 では,見ていきますと。


 まだ,スローダウンが受け取れる時間帯があります。


 前節は,30:00を経過するあたりの時間帯から明確にスローダウンしてしまい,ハーフタイムを挟むことでリズムを取り戻せるか,と思ったのですが,実際には後半立ち上がりから相手のリズムを「受けて」しまったことで,リズムを相手に掌握されてしまいました。


 今節も,「基本的には」同じ図式,と言わざるを得ないゲームだったと思います。思いますが,スローダウンの振れ幅が小さくなりかけているのも確かです。


 もちろん,「勝ち点3」を奪取することに成功したことが,もっとも大きな収穫であることは間違いないところでありますが,基本的なフレームに大幅な変更を加えることなく,フットボール・スタイルをどのように微調整していくのか,という手掛かりをつかんだかも知れない,という部分で(ちょっと見えづらいのは確かですけれど)収穫があったゲーム,と考えていいような印象を持ちます。


 立ち上がりの時間帯から,リズムをつかむ。


 前節と同じゲームへの入り方,でありますが,パッケージ変更がチームの機動性にポジティブな影響を与えていたようです。セントラル・ミッドフィールドが積極的にプッシュ・アップする姿勢を持っていることで,アタッキング・ミッドフィールドやトップとの距離感が整えられ,攻撃面にリズムを作り出すことができていたように思います。
 

 02:00という,まさしくゲームが立ち上がっていく時間帯での先制点奪取は,攻撃ユニットと守備ブロックとのリンクが微調整を受け,チームとしての機能性を取り戻した,という印象を裏付けるものでした。そして,最終的なフィニッシュへは結び付かなかったものの,ダイレクト・パスをリズミカルに繰り出し続けることで攻撃を組み立て,相手守備ブロックを揺さぶりにかかる,という形も表現できていました。リズムを掌握している時間帯に,どれだけ「縦」に仕掛けていく意識をつなぎ合わせていけるのか,どう仕掛けを加速させるのか,という部分が煮詰まってくると,さらに攻撃面がスムーズネスを持つように感じられます。


 さて。やはり30:00前後の時間帯はエア・ポケットであるようです。


 攻撃面,あるいは守備面というのではなくて。攻撃,守備両面においてリズムを失う,と言いますか,落としてしまう時間帯が生じてしまう。のでありますが,今節の相手はカウンター・アタックを効果的に繰り出せていたわけではありません。ウォーミングアップ・セッションからGKはロングフィードを意識していたようですが,「風」の計算までが収まってはいなかったように感じます。フラッグ・ポールに掲揚された旗は,しっかりと風をはらんでいました。その風によって,フィードが不安定なものとなってしまい,ボールがトップに当てられる局面はそれほど多くありませんでした。


 とは言え,エアポケットを生じたままに前半を終了したわけではなく。今節はリズムを自律的に取り戻していくことができています。


 前半終了を意識する時間帯に追加点を奪取することで,リズムを再び引き寄せて,ハーフタイムを迎えます。そして,後半立ち上がりは「受ける」のではなくて,「仕掛ける」姿勢を押し出していきます。


 ですが,45:00〜90:00までを通して考えるならば,相手のカウンターをギリギリでコントロールする局面もあるなど,必ずしも自分たちが描くフットボールで,リズムをコントロールしながら戦えていたわけではない,という印象を持ちます。また,追加点奪取という部分で不安定な部分を見せてしまった,という印象もまた,同時に持つところです。相手のカウンターをコントロールすると,シンプルに縦方向のパスを繰り出し,前掛かりになっている相手守備ブロックの隙間を狙った攻撃を仕掛けていく。その最終的な局面をコントロールされたことで,思うよりも難しいゲームにされた,と感じるところもあります。


 前節に明確なものとなった課題。そのいくつかはしっかりとクリアされたと感じますが,まだクリアするきっかけをつかんだ程度,と言うべき要素も残っているようです。それでも,チームはしっかりとステップを上がっているな,と実感できるゲームであります。


 ・・・ゲームを落ち着かせるための,パス・ワーク。


 単純に,縦に速く仕掛けるためのパス・ワークではなくて,チームのリズムを調整しながら,落ち着かせる方向にパス・ワークを巧みに使う時間帯が出てくると,チームの戦術理解がワンステップ深まるような印象です。ポゼッションしている時間帯ですと,どうしても「仕掛ける」ことに直結させたい。させたいけれど,「仕掛ける」ことだけに過度に意識が傾いてしまえば,フィジカルからチーム戦術がダメージを受けかねない。特に,負荷が高いフットボールを指向している今季にあっては,フィジカルをどう“On the Pitch”でコントロールするのか,が鍵になろうかと思います。


 ゴールを陥れる意識を,落としていいとは思いません。相手守備ブロックに隙が生じれば,仕掛けを加速させる姿勢までを抑え込むべきではないはずです。ですが,同時に「コントロールされたパス・ワーク」でチームを整えるタイミングも必要になってくるはずです。


 ある意味で,応用編とも言えるステップではないか,と感じます。このステップをクリアできると,「自分たちのフットボール」で勝負できる時間帯がさらに増加してくれるものと感じています。