対横浜FM戦(09−14A)。
相手の策に嵌ったゲーム。
確かに,そういう見方もできます。
できますが,「リズムを譲り渡してしまった」とも言える。「自壊」と表現するのが適当ではないでしょうか。
今節は,ボール・コントロールが安定性を失っていました。また,攻撃を仕掛けている時間帯にあっても,ボール・コントロールを高い位置で循環させられる局面がいささか少なかったのも確かです。
チームがファースト・ディフェンスの手掛かりを欠き,ポジショニング・バランスを崩してしまっているがために,相手が待ち構えているエリアでボール・コントロールを失うと同時に,相手がシンプルにコントロールできるエリアを提供してしまう。
結果的に,相手のスカウティング通りのフットボールを展開してしまったわけです。
相手が自分たちのフットボールをした,のかも知れないけれど。それ以上に,自分たちのフットボールを押し出せなかった,相手が嫌がる形で自分たちのフットボールを表現できなかった,という部分に敗因を求めるべきか,と感じます。
加えて言えば,リーグ・カップで機能したチームが,なぜ機能不全に陥ったのか。今節を考えるのであれば,リーグ・カップと照らし合わせて考えてみることも重要ではないか,と感じます。
まいど1日遅れ,の横浜FM戦であります。
まず手はじめに,今節のパッケージを考えてみると。
静的には4−4−2,ということになるでしょうか。中盤の構成は,ボックスほどにスクエアではなくて,フラットというほどにSBとの関係性を意識したものではありません。ちょっとだけウィング,という感じでしょうか。ただ,動的なパッケージを見ると,4−2−3−1に近い時間帯が多かったようです。そして,ひとつの「形」に固まってしまう時間帯も多かった。中盤とトップとの関係性が整理できていない状態に戻ったかのようで,狙うフットボールが表現できていなかった,という印象を強く持っています。
まず中盤を抜き出してみますと,セントラル・ミッドフィールドが最終ラインと前線との距離感を適切に保ち,攻撃面では縦への鋭さを作り出すリンクとして機能することが求められるはずですが,今節の中盤はアタッキング・ミッドフィールド,あるいはトップと有機的に絡みながら攻撃に関わっていく,という形がなかなかつくり出せませんでした。縦方向にシンプルに,という攻撃ならば,また違ったアプローチもあり得るかも知れませんが,中盤での機動性が鍵を握るフットボールにあって,「静的な」バランスが感じられる時間帯が多い,というのは相手守備ブロックが守備応対に混乱を生じる可能性が低い,ということにもつながるはずです。
立ち上がりから30分を経過するまでの時間帯,確かにリズムを掌握しかけた時間帯,という印象もあります。ありますが,実際には攻撃がなかなか循環せず,ピンポイントでの仕掛けを繰り出していく,という形に追い込まれていたように思います。アウトサイドにボールサイドを構築する,という形に持ち込む時間帯も,確かにありました。ありましたが,ボールサイドからどのようにボールを引き出すのか,という要素が欠落してしまった。ボールサイドを構築することだけに意識が強く振り向けられてしまって,ここからセンター,あるいはオープンサイドへボールを展開することで相手守備ブロックを揺さぶっていく,という局面がなかなか生み出せない。
また,トップとアタッキング・ミッドフィールドとの関係性が硬直した印象を受けています。
流動的にポジション・チェンジをしながら相手守備ブロックのマークを振り解き,スペースを狙ったフリーランを仕掛ける,と言うよりは,アウトサイドに流れてしまうとアウトサイドを主戦場とする時間帯が多くなってしまって,攻撃を構築する段階のパスがピンポイントになってしまう。そのために,パス・コントロールについてのミスが相手へのプレゼント・パスになってしまったり,結果として相手に攻撃を仕掛けはじめるポイントを提供する形になってしまっていたように感じます。加えて,ここまでのリーグ・カップで煮詰まってきた「2」の距離感が,実質的な3−1の関係性に引っ張られてしまった。トップの距離感が,もとに戻ってしまったような印象を受けるのです。ボックスに近いエリアで,適切な距離感を維持していることで脅威を与えられるはずなのに,ボックスから遠いエリアで,ビルドアップをしている。
これでは,トップが相手守備ブロックに脅威を,というわけにはいきません。
さらに。中盤が本来の機能性を表現できないと,アウトサイドもその機能を落としてしまいます。
相手の静的なパッケージは4−3−3。トップが近い距離感を形成しての3トップではなくて,ウィングが流動的にポジションを取りつつ,同時にSBとの関係性を意識する,という“ダブル・アウトサイド”パッケージであります。このパッケージに対して,どのように組織的応対をするか。
この部分で曖昧さを露呈したのは,後半立ち上がり直後の時間帯です。
ハーフタイムまでは,相手ウィングは必ずしも積極的なポジション・チェンジを仕掛けているようには感じませんでした。むしろ,ボールサイドでの守備的な安定性を確保しながら,縦に鋭く仕掛けていく,その「隙」を狙っているかのような印象でした。そのために,ボールサイドを構築することもできていたし,「結果として」ダブル・アウトサイドの中間位置で関係性を分断することもできていた。ある意味,リアクティブな姿勢を見せていたように思うのですが,後半立ち上がりからポジションを積極的に変えながら,縦へ仕掛ける姿勢を押し出してきた。関係性を分断される前に,縦に押し込んでしまうという形に持ち込んできたように思うのです。そして,前半コントロールされていた左サイド(浦和から考えるならば右サイド)での関係性を意識して,仕掛けの起点を左に強く意識する時間帯が増えてくる。
SBを深いエリアに押し込んでおいて,守備バランスを崩しにかかるという意図でしょう。その意図に,自分たちから乗っていったようなものです。実際,リズムを譲り渡してからの守備バランスは「最悪」に近いものでした。適切な距離感を持って「4」が動く,という時間帯が相当に短くなってしまい,08シーズンまでの「3」,その守備イメージが強く残っているかのような守備応対をしている時間帯が多くなってしまった。
4でスイーパーはいないはず。なのに,スイーパーがいるかのようなラインが見える。
4を基盤とするオートマティズムではなくて,「かつての姿」に自然とたよってしまっていた,その姿だったように思うのです。
サイドへの対応を不明確に残してしまっていることで,SBが押し込まれる。一方で,サイドからの攻撃は狙うフットボールの重要な要素でもある。ライン・バランスを崩す,そのきっかけだったように思うのです。加えて,チームがコンパクトネスを失っているから,相手が繰り出すカウンターに対して対処ができない。主導権を掌握しかけている時間帯に「攻めきる」ことができていないから,流れを半ば自分たちから手放し,相手が描くプランに乗ってしまう。
そして,チーム・バランスが「前」への意識で崩れたタイミングでカウンター・アタックを受ける。ここから失点を喫し「勝ち点0」へと抑え込まれる。
・・・いわゆる,“ベスト・パッケージ”です。
でありながら,実際には昨季のフットボールを表現してしまう。戦術的な理解に曖昧さを残したパッケージ,と結論付けるべきでしょうし,であれば,「勝ち点0」という結果は妥当なものとして考えるほかないゲーム,となるでしょう。
であると同時に。
「勝ち点3」から逆算するように「守備的な安定性」という要素を持ち出す必要はない,と思っています。むしろ,
- 「前半に攻めきれなかった,その要素は何なのか」
- 「ゲームの1/3を待たずして自壊し始めた原因は,何に求められるか」
を詰めていくことが重要でしょうし,アタッキング・ミッドフィールドとセントラル・ミッドフィールドとのバランスをもういちど確認していくことも重要であるはずです。そして,自然に「3」が出てきてしまった最終ラインが,「4」の約束事を再び徹底することも求められるはずです。「個」が持っているパフォーマンスを最大限に引き出すために,組織的な約束事を徹底していく,というのが今季のフットボールなのですから,「原点回帰」が求められるように思われます。
リーグカップでチームがしっかりと機能していたことを考えれば,クリアすべき課題,チームとしてさらに徹底すべき要素は自然に導かれるはずだ,と思います。その結果として,スターターに変更が加わる可能性は相当程度あり得るものと思います。