迷走が導く帰結。

トップフライト,あるいはプロモートがあるならば,当然に降格もあります。


 トップへと到達したと思えば,再び下部リーグへ,という形もあります。戦力的に問題を抱えているとは思えないようなクラブが,降格への道筋をたどってしまうケースもあり得ます。


 リーグ戦は,クラブの総合力を厳しく問う。


 ここではいつも書いていることですが,この「総合力」は“On the Pitch”方面での話にとどまるものではありません。クラブ・マネージメントなど“Off the Pitch”に関わる問題も含めて,クラブが問われるとも言えるでしょうか。


 マグパイズを襲った悲劇をある側面から切り取るならば,クラブ・マネージメント面での動揺が“On the Pitch”でのパフォーマンスに悪影響をもたらし続け,結果的に「降格」という結果を回避できなかった,という形として見えます。


 ならばなぜ,クラブ・マネージメントが動揺を続けてしまったか。


 東本さんのコラム(スポーツナビ)では,かなり分かりやすく謎解きがされています。


 プレミアシップを争い得る潜在能力を持つクラブ。


 そんな評価が,一時期は当てはまったのがニューカッスル・ユナイテッドというクラブか,と思います。


 では,プレミアシップを「争い得る」立場から勝負権を手放さない立場へとステップ・アップするために何が必要なのか。ここで,マネージメント・サイドが明確な設計図を描ききれなかったのではないか,と感じるところがありますし,東本さんのコラムには設計図の背景にあるはずの「信念」(とでも表現すべきもの)がアウトサイドからのプレッシャーによって揺れてしまっていた,ということが触れられています。


 これでは,明確な指針など立てようもない。


 指針がなければ,どのような個性を持った指揮官を招聘すべきか,その具体的なイメージを描き出すこともできない。となれば,監督交代が常態化してしまうことにもなる。結果的にファースト・チームがどのようなフットボールを表現すべきか,という部分において落ち着きを失うことになる。さらに2008〜09シーズンはシーズン途中での監督交代が2回にも及んでいる。いかにポテンシャルを持ったファースト・チームであろうとも,そのポテンシャルをユニット,そしてチームとして昇華させることは難しくなるし,ましてやフットボール・スタイルとしてピッチに表現するのは困難を極める,と。


 ・・・まさしく,“ネガティブ・スパイラル”であります。


 ニューカッスルに限らず,一般的に見て。


 あるレベルからさらにステップを,というタイミングは,実際にはかなり難しいハンドリングが必要とされるように思います。ごく初歩的な段階からあるレベルへと引き上げる,というときにはごく大ざっぱなイメージを提示するだけでも,ある程度の方向性が共有できるかも知れません。ですが,さらにレベルを引き上げていくためには,そのイメージが緻密さを増していく必要性もあるでしょうし,時には緻密さを増すがためにアプローチを変えなければならない,ということもあり得るでしょう。潜在している難しさを的確に理解し,その難しさに対する対応が適切に行える指揮官を選べるかどうか。そして,選んだ指揮官に対してどれだけのサポートをしていけるのか。


 そのためには,どのようなクラブにしたいのか,という設計図がなければならないはずです。クラブとしてどのようなフットボールを表現するべきか,という方向性でしょうか。イングランドでは,“manager”という言葉が示すように,クラブとしての基本方針を担う存在として監督が位置付けられます。ならば,監督選定はクラブの基本方針に直接的な影響を与える,とも言えるわけです。


 この部分で,ニューカッスルはアウトサイドに影響され過ぎた。


 アウトサイドの目線は確かに鋭いものがあります。あるけれど,アウトサイドに影響を受ける形で,揺らいではならないはずの根幹が揺れ続けてしまえば,結果としてアウトサイドの期待から離れ続けていくだけで,近付いていくことなどできはしない。


 ニューカッスルが来季,誰をマネージャーとして指名するかは置くとして。そこからどのような将来像が透けて見えるのか,楽しみにしています。