対大宮戦(09−13A)。

4−2−3−1だけが,最適解かな,と。


 確かに,流動性という要素は浸透しているように受け取れますが,その流動性が相手守備ブロックを揺さぶる,あるいはブロックの隙を突く,という部分へと結び付いているか,というと,今節はブロックの隙を突けていなかったようにも感じます。


 パス・ワークと「縦」,あるいは「斜め」との関係性がよくなかった。いささか,もったいないゲームだったと思います。


 中野田でのアウェイ・マッチ,大宮戦であります。


 ダッグアウトに装備されている“S2000改(シート)”が,代表戦仕様のブルーで統一されていたり,対面に位置するメイン・アッパーが解放されておらず,確認できるのはメディア・ボックスにいる記者さんだけ,などと「いつもの感じ」とは確かに違う,ホームのようでホームでない,ような感覚でありました。


 さて。今回は数字の話から入ってみようと思います。


 今季の基本的なパッケージは,実質ベースで4−2−3−1であります。ミッドフィールドでの機動性を最大限に引き出す,という意図があってのことでしょうが,今節においてはサスペンション,そして負傷によって主力が複数欠けている状態でした。そこで,4−4−2,と受け取れるスターターへと組み替えられます。


 確かに,キックオフ直後のほぼ静的な状態では,4−4−2と表現すべきかも知れなかったのですが,クロックが進むに応じて,パッケージが4−2−3−1へと近付いていました。


 まず,もったいないと思ったのはこの部分です。


 トップが,いささか低い位置でプレーをしている時間帯が多かったわけです。積極的に相手守備ブロックとの駆け引きを仕掛け続けることで,綻びを作り出していくのではなくて,攻撃の組み立て,そのごく初期段階に関わるために,かなりミッドフィールドでも低い位置でボール・タッチをしていました。もちろん,組織的な守備応対の延長線上として積極的に見ておくべき局面もあるのですが,低い位置でボールに関わっているがために,本来怖さを持っていなければならないエリアでの仕掛けが機能してくれない。


 たとえば,ビルドアップ段階でボールをセントラル,あるいはサイドに預けてから,そのボールが相手守備ブロックにとって「怖さ」を感じるエリアへと繰り出される,という形がなかなか少なく,トップも相手ブロックを揺さぶるようなポジショニングが取りきれなかったような印象です。そのために,ポゼッションしていながらボールが縦に,という形に行き着かないような印象を持ちました。


 また,もったいないと思ったのは「縦」のオプションが意外に少なかったことです。今節も,と言うべきかも知れません。


 ボールサイドで数的優位を。


 恐らくは,今季の重要な約束事でありましょう。そこから,オープンへと展開する,と。そこで,深く入っていく局面はかなり見られるのですが,意外にセンター方向へと切り込んでいく局面は少ないような印象を持ちます。また,ラスト・パスを受けようとするトップやセントラル,ケースによってはSBが守備ブロックに対して斜めから侵入してくる,という形もまた,それほど多くはありません。深く攻め込めているのは確かなのですが,結果として仕掛けでの窮屈さも抱え込んでしまっているようにも感じます。


 また今節は,スターターを冷静に見れば,2トップとしての機能性を期待します。しますが,実際には1トップ的な時間帯が多くなっていました。2トップとして,横の循環もできればいいのですが,実際には縦の関係として位置している時間帯が多く,横方向での距離感では,必ずしも適切,とは言えなかったように思うのです。


 ・・・まだ,柔軟性を求める時期ではないかも知れませんが。


 それでも,コンセプトをどう表現するのか,という幅はあってもいいかな,とは思います。また,フリー・ランが今季のフットボールで大きな鍵であることも,ミッドフィールドの構成が変わったことで,あらためて感じられたように思います。


 戦術的な浸透度でいえば,確かにバラついていると思います。勝ち点であり,スタンディングというリアリズムへの軸足を意識しながら,同時に新たなスタイルを浸透させようとすれば,意図的にバラつかせる必要もあるでしょう。そのために,フリー・ランの重要性が落ちているのではないか,とも。


 ただ,スターターの個性に応じて,微妙なパッケージ変更もあっていいとは思うのです。シーズン終盤にチームが加速をかける。そんな状態に持ち込むためには,戦力的な幅もそうですが,戦術的な幅もあっていいと思います。その幅を作り出すための時間が,リーグ戦中断期間(であり,同時にカップ戦の期間)ではないか,と感じます。