先行開発の舞台として。
位置付けは違ってきた,かも知れません。
知れませんが,「重要性」が下がっているとは思いません。
むしろ,違う方向から重要性を意識していいトーナメントでは,と感じるところがあります。
“リーグ・カップ”であるヤマザキナビスコ・カップであります。
シーズンによってレギュレーションが変動しているカップ戦であります。
それだけに,クラブとしてどういう位置付けをするか,が問われるトーナメントでもある,と感じます。
ちょうどフォルカーさんも,大分戦後の記者会見(オフィシャル)で,非常に興味深いコメントをされています。そこで今回は,フォルカーさんのコメントを意識しながら書いていこうと思います。
今季の浦和は,フットボール・スタイルを全面的に変更しています。
守備面から考えるならば,3から4へ。
攻撃面を考えるならば,2−1というユニットから1−3というユニットが流動性を維持しながら,という形へ。
当然,この形は「個」を意識したものでもあるはずです。
対して,ナビスコではスターターが変更されることが多いですし,アウェイ・大分戦では若手選手がスターターとしてクレジットされてもいました。
ならば,チーム・コンセプトを動かさないのは当然として,静的なパッケージが微調整の対象になる,と考えるのもまた当然のこと,であるように思うのです。
であれば,微調整のときには「振り出しに戻る」必要も,覚悟も要るのではないか,と。
戦術的な理解度を深めるためには,チームにしっかりとした負荷が掛かる実戦が最も重要ですし,戦術的なミスマッチが生じる相手との真剣勝負の中でどのような部分を修正する必要があるのか,どのような戦術要素をさらに徹底させる必要があるか,体感することを通じて熟成を進めていく。
たとえば,カウンター・アタックに対して,どのような意識を構築しておくのか。
カウンターを抑え込む,という方向から考えるならば,守備面での安定性を,というアプローチも成立しますが,08シーズンまでのスタイルに戻ってしまいます。
そうではなくて,攻撃面での精度を高め,相手が張っている網のエリアで攻撃を寸断されないようにする,という意識付けを徹底してきた,と。
09型のフットボール、そのディテールを形作るのは実戦でもある,と感じるわけです。
リアリズムと,今季からの戦術イメージを織り合わせるには,実戦が絶好である,と。
高い「個」を持っている。
それは,ピッチに表現されるパフォーマンスだけではなくて,戦術的な理解力、経験に基づく柔軟性をも含む言葉として理解される必要があるでしょうか。この差は,思うよりも大きいと思うわけです。
であるならば,単純に若手をパッケージに落とし込むだけでは意味がなく,シーズン序盤と同じルートを通ってもらう必要があるように思うのです。
ただ,プロフェッショナル・クラブとして最優先項目であるはずのリーグ戦で,ファースト・チームの基盤を広げるアプローチを徹底するのは,実際には難しいとも感じます。
将来に向けた先行投資,という見方は十分に成り立ちますが,その先行投資のために「勝ち点」がひき換えになるかも知れない,というリスクをどこまで織り込むのか,と考えると,最小限にリスクを抑えておきたい,という意識が当然働くはずです。これはフォルカーさんが,コメントで指摘される通りだろう,と思います。
若手を積極的にスターターとする,その必要性も必然性もあるタイミング。
そのタイミングでゲームが組まれるのが,リーグ・カップであるナビスコです。
であれば,「先行開発」の舞台としてナビスコを位置付けても不思議はない,と。
コレクティブであることを意識しながら,「個」という要素を決して消し去っていないフットボール。
09型をそう考えるならば,パッケージはあくまでも「外枠」でしかないはず。
コンビネーションの引き出し方が違えば,4−2−3−1であったとしても実質的には4−3−3的な時間帯が増えるかも知れませんし,局面によっては4−4−2フラット的なパッケージが機能する可能性もあります。
戦術的なオプションなど,基盤の広がりを作り出す好機がナビスコではないか,と思うのです。
そして当然,その舞台を失わないためには,「勝ち上がる」ことが求められます。
リーグ戦とは違った緊張感は,チームの基盤を強くしてくれるはずです。
ファースト・ラウンドの残り3ゲーム,もちろん結果も重要な要素ですが,どのようなパッケージで戦っていくのか,そちらにも楽しみがあるように思います。