対G大阪戦(09−12)。

2009シーズンを3分割したとして。


 ファースト・ステップからセカンド・ステップへ,というタイミングが第12節,となりましょう。新たなフットボール・スタイルへと踏み出したファースト・チームが,確実にチーム・ビルディングのステップを踏めているのか,そんな確認をするタイミングかも知れません。


 そんなタイミングに,絶好の相手が組まれていた,と考えていいでしょう。


 2009シーズンは,彼らとの共通項を持つフットボールを狙っています。戦術的に,真っ向勝負が成立しやすい形でしょうか。となれば,「現時点での」到達点も,クリアすべき課題も見えてくる,と。2009スペックのフットボールを徹底することで,相手のフットボール「封じ込める」ことができるならば,2009スペック,その狙う方向性への確信が深まっていくに違いない。


 そういう視点からゲームを振り返るならば,奪いきれなかった「勝ち点2」に相当する無形な収穫,あったものと思います。それ以上に,ゲーム・クロックがびっくりするほどに速く進んでいるかのような印象を持つ,緊張感が高く維持されたいいゲームだった,と思います。


 いつものように1日遅れ,のG大阪戦であります。


 中盤での主導権を,実質的に掌握しながらゲームを進められた。また,中途半端なエリアで攻撃が潰される,という形が抑え込めた。


 これらの要素が,守備面に関してもポジティブな影響を及ぼした,という印象を持ちます。


 前節は,守備面に不安定性を見せてしまいました。そのことは確かですが,守備面だけに意識を振り向けすぎるのは,今季狙うフットボールを考えれば,必ずしも最適な方法論ではないとも感じます。守備ブロックを基準にして戦術を組み立てるのではなくて,もうひとつ高いエリアを基盤として戦術的なピクチャーを描く,というのが今季の基盤である,とピッチからも受け取れます。この基盤に変更を加えることなく,守備面での安定性を確保するためには何が求められるのか。その方法論を,相当程度ピッチで表現したのではないか,と思うわけです。


 カウンター・アタックへの対抗策を守備面から考えるとすれば,守備ブロックを安定させる,というアプローチもあるか,とは思います。思いますが,攻撃の初期段階とも言うべき高い地域での積極的な守備が仕掛けづらくなる可能性があり,攻撃を組み立てるエリアが相手ゴールから遠ざかってもしまいます。また,最終ラインから中盤での距離感が,自陣よりに傾く時間帯を生むことになりますから,相手が攻撃リズムを構築するポイント,中盤低め(浦和サイドから見るならば,当然に高め)のエリアでのプレッシャーも弱まってしまうことになります。


 結果として,相手にリズムを譲り渡してしまうことになりかねないし,攻撃を仕掛けるにしても深いエリアからの仕掛けになってしまうために,パスを組み立てるのが難しくなる。主導権を掌握するのであれば,相手が攻撃リズムを作り出すポイントで積極的な守備を仕掛ける必要がありますし,となれば,チーム・バランスがどのようであるべきか,は自然に導かれます。


 立ち上がりから積極的にリズムをつかみ,コンビネーション・フットボールという側面では共通項を持つ相手に対して真っ向勝負を挑む。そして,主導権を奪い取る。この時点で,守備面を意識して戦術的な微調整を,という選択肢は取り得ない話ですし,チームも守備面だけに傾いたゲーム・プランは描いていなかった,と。


 むしろ,攻撃面を基準に置いたカウンター対策を意識していたのではないでしょうか。守備陣形を整えられるだけの「時間」を生み出すには,どうするか,と。
 

 つまり,攻撃を相手に寸断されることなく,攻めきる方向で戦術的な約束事を徹底したのではないか,と受け取れます。そして今節にあっては,ゴール・ネットを揺らすことまではできなかったものの,攻撃を完結させるという部分では,前節に表面化した課題をクリアしつつある,という印象を持ちます。


 もちろん,今節にあってもカウンターを受けてはいます。ただ,攻撃を守備ブロック(センター・ハーフとセンターバックで構成されるブロック)で寸断され,シンプルに攻撃を組み立てられた,という形ではなくて,セットピースから縦に持ち込まれる,という形で,守備応対に関してはギリギリ,という印象もなくはありませんが,それでも最終的な守備対応の段階ではコースを切りに行くなど,決して悪くない対応だったか,と思います。


 対して,課題面を取りだしてみますと。


 大ざっぱな言い方をするならば,縦方向での変化をどう付けるのか,という部分と「斜め」をどのようにして生かすのか,という部分ではないか,と感じます。


 まずは,「縦」の話でありますが。


 ボールを自分たちのリズムで展開できている局面では,自然に縦方向への機動力と横方向への展開力がバランスする形が作れていたように感じます。相手守備ブロックを横方向に揺さぶりながら,同時に相手守備ブロックが作り出した隙間を狙うことができる,わけです。


 ですが,「縦」への仕掛けが連動しない時間帯があるのも確かです。相手守備ブロックを,横に揺さぶるという要素だけが強く意識されてしまって,縦に仕掛ける形が抑え込まれてしまう局面もあった。流れの中であれば,自然に出ている縦方向への意識を,「意図して」出していく,その形が見えてくると,さらなるステップを踏めるのではないか,と感じます。


 次に,斜めの話を絡めていきますと。


 相手をボール・サイドへと引き付けること,その意識は浸透しているな,と感じます。意図的にボール・サイドでの数的優位を構築することで,相手を引き付ける。この段階までは,恐らく2009仕様は煮詰まってきていると思うのです。また,ボール・サイドでの仕掛けが深くなりすぎる局面もあるな,と思います。ゴール・ライン近くのエリアにまで侵入できているのは間違いなく収穫なのですが,縦方向の変化,という部分では単調な印象も残りますし,フィニッシュへと結び付ける仕掛け,その選択肢が結果として狭まってしまっている印象もあります。


 サイドでの仕掛けが,縦方向だけに限定されるものではなくて,相手守備ブロックを横方向へも揺さぶれる形に広がっていくと,フィニッシュでの選択肢も広がっていくような印象を持ちます。


 ・・・「現時点」での到達点として,決して低くはない。


 ただ,さらに高い位置へと上がっていくためには,ブラッシュ・アップすべき要素も多い。それだけに,スコアレスに抑え込んだという評価も成立する一方で,スコアレスに終わってしまった,均衡を崩しきれなかった,という評価も成り立つ。そんな印象を持ちます。


 2009スペックの初期段階は,通過しつつあるでしょうか。いよいよ,応用を織り込んでいく中期段階,という印象です。その段階では,ときに意図的な「約束破り」がアクセントになる可能性もあります。縦方向への機動性が確保できない局面では,なかなか変化が生み出せない。のみならず,ボールが横方向にだけ動いてしまって,守備ブロックの揺さぶり方がひとつの方向に片寄ってしまう。横と縦のバランスをつかめると,仕掛けに「怖さ」が見えてくるのではないか,と感じます。


 ともすれば,失ったのかも知れない「勝ち点2」。その勝ち点に相当する課題は,シーズン中盤を戦っていくうえでの大きなヒントになるはずだ,とも感じます。