ポルシェ的GT-R。

確か,もともとは「必要に迫られた」追加モデルでした。


 BNR32は,グループAの技術規則を徹底的に読み込むことから設計がはじまった“パーパス・ビルド・マシン”として知られています。2600ccにターボ・チャージという中途半端な排気量設定にはじまり,4WDを採用するという決断も最低重量,そしてタイア・サイズについての規定を読み込んだ結果,と言われます。


 隙がない設計,のように思えますが,意外な弱点もあったと言われています。その弱点は,改造範囲が狭い“グループN”で表面化します。


 ブレーキ,であります。


 放熱性を意識して,ブレーキ・ロータにドリル処理を施していたのですが,そのドリル処理を施した部分からロータが割れる,であったり,筑波のようなブレーキにとって過酷な環境ですと,制動距離が早い段階から伸びてしまうなど,ブレーキが足を引っ張っていたのです。このウィーク・ポイントを潰すために追加されたのが,“Vスペック”だったわけです。レーシングな環境をあくまでも意識した追加モデルだったわけですが,今回もどこかにレーシングな香りがするでしょうか。



 今回は,フットボールを離れまして,熊倉さんのコラム(webCG)をもとにしつつ,クルマの話です。


 ”スカイライン”という名前が外れて,プライス・タグに書き込まれる数字が大きくなった。そんな印象がありますが,この追加モデルはさらに数字が大きくなっております。


 であれば,相当なパワーを絞り出しているのだろう,などと思えば,実際にはエンジンに意識が振り向けられたわけではないようです。


 むしろ,軽量化とコントロール性に強く意識を振り向けたようです。


 エグゾーストもチタンを採用しているようですし,熊倉さんも触れていますが,カーボン・ブレーキを投入しています。使い切れないパワーを無理やりに絞り出すよりは,いまあるパワーを存分に使いこなすために,安心して減速できる(コーナに飛び込める)形を整備しよう,という意図でありましょう。このコラム,熊倉さんはポルシェのスペシャル・モデルと比較して「安いもんです(=言葉通りに受け取るよりも,“リーズナブル”と読み替えるべきでしょうね。)」と締めておられますが,確かにポルシェ的な追加モデルかも,と思います。


 911にしてもGT−Rにしても,標準モデル(基準車,なんて言い方もするようですが。)の段階でかなりの完成度です。個人的には,日常を意識して選択するのであれば無理にスペシャル・モデルを考えるのではなく,標準モデルを考えるほうがいい,と思うところがあります。とは言え,もちろん中古で,ということになりますが。となると,964あたりはオシャレでいいですね。930までのクラシックな感じと,モダンな感じが同居して。ポルシェと言えばRR,という意識もありますが,反面で全天候型GT的に使うことのできる911にも魅力を感じますので,カレラ4など,いいなと思います。


 対するGT−Rはアフォーダブルだし,RB26を買う,という意識で買っておくのも一策だけど,BNR32にしてもBNR34にしても戦闘機と言いますか,色気が・・・(以下省略)。むしろ,新車当時は不人気を託った,BCNR33が落ち着いていていいかな,なんて。


 ・・・それはともかく。


 ポルシェはFIA-GTなどのレースに参戦するコンペティターに向けて,追加モデルを用意するべく,GT2やGT3という追加モデルを用意しています。また,ニスモは2009シーズン,FIA-GTに車両開発を兼ねた参戦をしています。となると,この追加モデルはFIA-GTへと本格的に参戦するための足掛かり,という見方もできるように思います。


 ファクトリー・レベルで言えば,長く国際舞台から遠ざかっています。彼らが本気で国際舞台に出ていく,その宣言書がこの追加モデルだとすれば,モータースポーツ・フリークとして,うれしい話ではあります。