対川崎戦(09-11)。

09スペックを,煮詰めること。


 いつしか,スタンディングというリアリズムで霞みかけてはいなかったでしょうか。


 当然,連戦を乗り切るためにはリアリズムも重要な要素です。ただ,リアリズムに傾きすぎては09スペックの構築からは,遠ざかってしまいます。単純に,守備的な安定性だけを求めるだけでは。


 連戦の最後で,勝ち点3が滑り落ちた。


 確かに,掌中に収めかけたものが滑り落ちたわけですが,同時にファースト・チームがクリアしなければならない課題がもらえた,とも言えるはずです。


 相手が描くプランに乗らないためには,何をすべきか。リズムを引き寄せるために,何をすべきか。09スペックとして狙うフットボールを表現するために,何をアクセントとすべきか。


 ファースト・チームが意識すべきことが,明確に見えたとも思います。


 時間的な余裕があるタイミングで,敗戦を経験した。チャンピオンシップ・ポイントという収穫ではないけれど,フットボール・スタイルをさらに熟成させるためのヒントは,多く得られたのではないか,と感じます。まいど,1日遅れでありますが,川崎戦であります。


 まず手はじめに,相手のゲーム・プランを推理するところからはじめてみよう,と思います。


 端的に推理すれば,中盤での勝負はそれほど強く意識しない。特に,ミッドフィールドで守備を展開させないことを意識していたはずです。同時に,チームを釣り出すことも。


 バランスを攻撃面へと傾けさせて,手薄になったエリアへミドルレンジ・パスを狙う。ロングレンジ・パスではなくて,守備ラインを揺さぶることを狙ったパスを。


 今季の浦和,そのビルドアップを意識したプランでしょう。当然,持っているストロング・ポイントが収まってもいる。そのプランに,結果として乗ってしまった。


 どうして乗ってしまったか,を考えていくと,09仕様のフットボールで何が大事か,へとつながっていくように思います。そんな視点で見ていきますと。


 どのような形かは別として,攻撃をフィニッシュへと結び付けられた局面がいささか少なかった,という部分が大きく影響してしまったように感じます。


 今節,攻撃ユニットの循環,という部分では進化を感じられた部分もあります。実質的な1トップにウィンガー的にイニシャル・ポジションを取るセンター・ハーフ,そしてトップとの距離感を意識したセンターがポジションを流動的に入れ替えながら攻撃を組み立てていく,という形は変わりませんが,このフォーマットに低めに構えるセンター・ハーフも絡んでいく,という時間帯が増えてきていた。特に前半の時間帯で多く見られたか,と思いますが,この形は09スペックのフットボールを煮詰めるにあたり,ポジティブな要素になってくれるものと思います。


 思いますが,今節はポジション・チェンジが相手守備ブロックを揺さぶる,あるいはクラックを作り出す,という部分へと結び付かなかったのも確かです。パス・ワークを基盤として攻撃を組み立てる,という意識が徹底されていることの裏返し,というか,パス・ワークという要素にだけ意識が引っ張られている時間帯がある。そのために,ポジション・チェンジが相手への脅威,という要素に結び付いてくれない局面が生じているように受け取れました。


 要は,「攻めきれていなかった」という印象が強いのです。


 MDPにコラムを寄稿されている福永さんの言葉を借りるならば,「攻撃を完結させられていない」ように受け取れる。そのために,チーム・バランスを崩す,というネガティブをもたらした,と。


 攻めきれない背景には,攻撃オプションがまだ多くない,という部分も作用しているでしょう。たとえば,サイドが深く相手守備ブロック裏のスペースを狙う,という形は確かに見られました。が,あまりに深く侵入してしまったがために,選択肢がかえって狭まってしまった,という局面へと結び付いてしまってもいました。ボールサイドでの数的優位という意識は浸透しつつあるようですが,そこから仕掛けへ,というタイミングでバリエーションが「縦」方向だけ,というのがいささかもったいなかった。


 チーム・バランスが相手方向へと傾き,さらにボールサイドへと傾く。


 反対側から見れば,オープンサイドへとパスを繰り出し,カウンターを狙いやすい形です。であればこそ,攻撃をフィニッシュへと持ち込むことでバランスを整える時間的な余裕を作り出したいはずですが,今節は仕掛けを寸断されるところから,相手の逆襲を受けた。この形は前半から狙われていたように思いますが,後半の戦術交代によって,さらに明確なものとなっていたように思います。ミッドフィールドでの守備が機能すれば,最終ラインは余裕を持った守備応対が可能となりますが,カウンター・アタックでは守備ブロックがファースト・ディフェンスに入ると同時に最終的なコントロールまでをも担う必要性が出てしまう。守備が不安定,なのではなくて,攻撃が徹底できなかったから逆襲を受けた,と見るべきでしょう。


 乗ってはならないプロットに,なかば自分たちから乗ってしまった。そのきっかけは,仕掛けを完結できなかったことにある。ただ,いいタイミングで課題をもらった,と思うのも確かです。


 連戦の最中に,このような敗戦があったとしたら,修正にかける時間が不足していますから,チームに対する悪影響が避けられなかったでしょう。連戦の最後に,勝ち点を奪えなかったのは確かにもったいないけれど,課題を整理する時間ができるタイミングであった,というのは決して悪くない。パス・ワークとアクセントのバランス,という意味ではまだまだ初期段階,というところでしょう。どういうアクセントを付けられるか,そして誰がそのアクセントを仕掛けのスイッチとして使っていくか,など,伸びシロは相当にあるはずです。


 スタンディングはあくまでも結果論です。そのことに過剰に引っ張られるのではなく,着実に煮詰めるべき部分を煮詰める。その煮詰めを,徹底的に支えていくべき時期だろう,と思います。