WSBKの血統、なストリートファイター。

たとえば,油冷時代のGSX−R。


 カウルに隠されたエンジンは,なかなかの逸品でした。冷却性能を確保するために,狭いピッチで刻まれたフィンが,結果として格好良さをもたらしてくれたのです。
 ・・・という視点でカウルを外すのではなくて,軽量化を施す,というようなスタンスでカウルを外したひとがいました。そしてハンドル・バーもセパレートからトップブリッジを変更してストレート・スタイルのバーへとモディファイです。となれば,ライト・ハウジングも個性的なものになります。


 いまでもそのイメージを引き継いでいるのは,トライアンフでしょう。なのですが,“プロダクション・モデル”にこのアイディアを持ち込む,という可能性を最初に見出したのは,恐らくドゥカティでしょう。



 ということで,フットボールを離れましてバイクな話。ドゥカティが発表した「過激な」ネイキッド,ストリートファイター(英語)の話をしてみよう,と思います。


 もともと,ドゥカティはここまで過激なモデルを用意するつもりはなかった,のかも知れません。ストリートファイター,というモディファイ手法がバイク好きで根付いている,という感覚はあったでしょう。ただ,実際にリリースするにあたってはバランスを意識したのではないか,と思います。
 “モンスター“は確かに当時のトップレンジ,851の血統を感じさせるトレリス・フレームを採用していましたが,エンジンはレーシングな環境からは距離を置いた空冷モデルを搭載,ビックリするほどの高性能,とまでは感じられませんでした。


 その流れが変わったのは,レーシングな血統に入る水冷エンジンを搭載したあたり,でしょう。


 スポーティなネイキッド,という表現ではなくて,明らかにストリートファイター。そんなモデルが追加されたのでした。なかなかに攻撃的なスタイルを含めて,魅力的なモデルでした。が,モンスターがモデルチェンジするにあたって,高性能モデルは姿を消します。


 もったいない,と思っていたら,さらに過激さを増して帰ってきた,と。
 つまり,コンポーネントがほとんど“スーパーバイク”なのであります。エンジンはWSBKにも持ち込まれたものと,基本構成は同じです。とは言え,現在の主戦兵器である1198ccではなくて,1099ccに排気量を抑えるとともにパワーもネイキッドとしてのバランスを意識した形に振っているようです。日本仕様だと,さらに回転数が抑えられる可能性がありますが,それでも相当なハイパワーであることは間違いないところです。
 足回りはグレードによって異なりますが,1098と同様にスタンダードがショーワ,Sモデルがオーリンズという設定が施されています。
 そして乾燥重量はドゥカのリリースを読むと,スタンダードで169kg,Sモデルは2kgの軽量化が達成されている,と。


 となると,何のディバイスもなければ相当な悍馬でありましょう。ドゥカティもそのあたりは意識しているようで,トラクション・コントロールを標準装備しているそうです。イタリアン・デザインに引かれて,というスタンスもアリだとは思いますが,なかなかの「やり手」であることが濃厚に漂ってくるこのバイク。手練れには,これ以上ないチャレンジングなバイクではないでしょうか。


 ・・・個人的にはスタイリングには惚れましたが,「手練れ」ではありませんのでまずは修行であります。