AZ戴冠が変えるものは。

ファン・ハールが指揮官となってから,変化が明確に現われてきたような感じです。


 ただ,その変化は急激なものではなかったとも言えるでしょう。間合いを詰めるかのように,シャーレへの距離を縮めてきたように思えるのです。


 そして2008〜09シーズン,シャーレを引き寄せてみせた。このシャーレ,「新たなバランス」への第一歩になってくれることを期待したいと思います。とまあ,マクラ(とタイトル)でお分かりかとは思いますが,スポナビさんの記事をもとに,エールディビジな話であります。


 エールディビジのリーグ・テーブル(ESPNサッカーネット・英語)を見ますと,AZアルクマールの成績は第31節終了時で24勝3敗4引き分け,であります。リーグは3節を残す段階ではあるのですが,チャンピオンシップ・ポイントで2位に付けているトゥエンテに対して11ポイント差を付けていますから,この段階での優勝が決定,ということであります。


 さて。この記事でも触れられていますが,AZは1980〜81シーズン以来,28季ぶり2回目のシャーレ,ということだそうです。ということは,28シーズンの長きにわたって,エールディビジの覇権はアヤックス・アムステルダムフェイエノールトロッテルダム,そしてPSVアイントホーフェンによって掌握され続けた,ということになります。


 確かに彼らは,それだけの強さを持っていた,とも言えるでしょうか。


 特に1994〜95シーズンにはアヤックスが欧州カップ戦でビッグイヤーを奪取,トヨタカップも奪っていますが,ヨーロッパ・タイトルという部分で言うならば,シンジ選手が在籍していた当時のフェイエノールトロッテルダムがUEFAカップを制して以降,遠ざかってしまっています。欧州でのプレゼンスを失っていくとともに,エールディビジの位置付けも下がってしまっていたように思うのです。


 ただ,最初にも書きましたが,AZがコー・アドリアーンセに代わってファン・ハールを指揮官として迎えたあたりから,変化が明確に見えてきた,ということになるかと思います。


 サッカーネットさんのテーブルはなかなか見やすくできているのですが,エールディビジにおいて欧州カップ戦への出場権を「無条件で」獲得できるのはリーグ首位に立ったクラブだけで,2位は予選からの参加となります。つまり,原則的に3位以降のクラブがUEFAカップへの出場権を得ることになるのですが,ここ数季を振り返ってみると,AZはUEFAカップを主戦場とすることができていますし,シーズンによってはリーグ2位のポジションを獲得してもいます。


 長く寡占状態にあったエールディビジにあって,その寡占を崩す可能性を持ったクラブ,その有力候補として意識されるクラブだったか,と思うのです。フェイエノールトロッテルダムは,クラブの狙う方向性が明確ではなかったのか,自滅するかのように勝負権を失っていったような印象がありますが,逆にAZアルクマールは時間を掛けて勝負権を引き寄せてきた,という印象です。


 そして今季,その勝負権を結果に結び付けることができた,と。


 2位に付けているトゥエンテもそうですが,長く続いてきたパワー・バランスに対する対抗勢力がかなりのプレゼンスをみせつつあるな,と感じます。欧州での存在感が薄くなっていたエールディビジにあって,彼らの躍進がアヤックスアイントホーフェンに刺激を与えたものと思いますし,その刺激がリーグ戦にダイナミズムを再び持ち込むきっかけになってくれるといい,と思います。