布石としてのカップ戦。

基盤整備とともに,さらなる強化を図る。


 そのためには,ある程度戦力を固定して熟成を図る,というアプローチも必要でありましょう。と同時に,戦術的なイメージを的確に表現できるユニットを大きくしていくことも大事です。


 これはなかなか,両立できる話ではありません。戦術的な要素と個人の持っているイマジネーションを組み合わせていくためには,可能な限りユニットを崩したくない,という発想もありますし,となれば新たなユニットを試すとしても,戦術交代をかけてからの時間しかないわけです。


 実戦負荷が掛かっている中で,コンビネーションと戦術理解を深める。そのためには,ある程度の時間がほしい。


 と,考えていくと代表勢がチームを離れるタイミング,というのは決してネガティブばかりではない,などと思うわけです。ベストメンバー規定を意識することなく,積極的なテストを仕掛けることができるのですから。


 いささか,長い前提論でありますが。WBC連覇,はちょっと置きまして(やったですな。あとで何らか書いておこうとは思います),フォルカーさんのコメント(オフィシャル)をもとにしながら,カップ戦の話であります。


 カップ戦初戦,代表勢は土曜日のゲームに向けて拘束されております。のみならず,コンディションを考慮する形で細貝選手が帯同しない,と。となると,スターターを構成してきた5選手が欠ける形になります。


 表面的に見れば,いささかネガティブな話です。ですが,ネガティブばかりとは言えないように思うのです。


 今季は,タレントによって方向性が大きく違うフットボール,を志向するわけではありません。表現の細密さであったりに違いは間違いなく出るでしょうが,フォルカーさんが持ち込む「戦術的な約束事」という基盤を通して,個を生かしていくフットボールを志向しているはずです。となれば,基盤が違ってくるわけではありませんし,表現されるフットボールにしても,大きな差異が生まれる余地は少ないはずです。


 そして,何より大きいのは,実戦を通して指向するフットボールを感じ取ることができること。


 誰かが欠けたときに,表現できるフットボールにブレを生じる。そういう事態を避けるためには,戦術をしっかりと理解しているユニットが大きい方が有利ですし,そのためには,できる限り実戦経験を多くの選手に積ませておきたいはずでもあります。となると,代表勢の離脱はある意味チャンスでもあるな,と思うのです。


 当然,勝ち点を争う実戦ですから,単純に実戦経験が積めればいい,などと言うつもりはありません。代表勢を欠き,さらにスターターを欠いた状態のチームで,最もパフォーマンスの高い選手が選ばれているわけですから,結果を意識していないはずもないでしょう。「結果として」シーズンを戦っていく布石としてもメンバーチェンジが機能すれば,一挙両得だな,と思うわけです。