慎重に、臨戦態勢。

緩やかに、スターターを固めつつあるでしょう。


 ただ同時に見えてくるのは,明確な色分けをしていないこと。


 ピッチに立つスターターと,それ以外などという,競争環境を無視するかのようなグルーピングをしてはいませんし,恐らくはこれからもしないのでしょう。チーム・ビルディング,その初期段階でのメンタル・マネージメントは相当程度に機能しているように見えます。


 ということで,フォルカーさんのコメント(オフィシャル・リリース)をもとに。


 フォルカーさんは実に慎重だな,と思います。


 ちょっと読めば,リーグ開幕戦でのスターターは蔚山現代戦でのスターターであると読み取れそうです。ですけれど,実際には「もし今日が開幕戦であったならば」という留保文言が付けられています。つまり,蔚山現代戦への準備段階で,しっかりとしたコンディショニングができていて,しかも戦術理解度が高まってきている選手をチョイスした結果,であることが遠回しにであるにせよ,表明されているように思うのです。


 もちろん,現段階におけるチーム,その基盤は蔚山現代戦におけるスターターに近いものではあるでしょう。であれば,スターター・リストについて変更をかけるとしても,微調整レベルにとどまる可能性も否定はできません。ただし,このブリーフィングを読む限りにおいては,スターターをフィックスしている,というニュアンスのコメントは残していません。


 フォルカーさんの,

 実際には、開幕まであと11日あるわけで、その11日間で何が起きるかは分かりませんし、週末にはトレーニングマッチもあるわけですから、私自身も開幕までのすべてのトレーニングを通してコンディション面も含めて考え、最終的な開幕戦でのスタメンを決めようと思っています。


というコメントが,すべてを示しているように感じます。


 たとえば。現段階においてスターターを固定しているとして,そのことを明確に示してしまえば,チーム内で機能していた競争が,その機能を失うこともあり得るでしょう。競争状態が維持されていれば,本来不要であるはずのメンタル・マネージメントをしていかなくてはならない,とも言えるでしょうか。


 また,清尾さんの視点も,見逃すことはできません。


 清尾さんが指摘するように,トレーニング・マッチでのスターターは,若手選手と中堅,そしてベテランが巧みにバランスされたものでした。競争環境の維持,という側面も確かにあるでしょうが,同時に戦術理解度のギャップを極力小さなものへと収めていく,という意図もあるはずです。


 スターターが強固に固定されてしまえば,コンディショニングの問題,あるいは負傷,サスペンションによってベストなスターターが組めないときに,チームが表現すべきパフォーマンスが急激に低下してしまう可能性を孕むことになりますし,昨季においては,スターターが表現するフットボールと,スターターから外れてしまった選手で表現されたフットボールとで,共通性を見つけるのは難しいものがありました。


 コンディションが,チームのパフォーマンスに直結してしまうことを回避する。そのためには,「過度に」特定のタレントに依存しないチームを構築すること。


 その前提を,構築している段階である,ということも意味しているように,感じます。


 臨戦態勢を取りつつあるのは,間違いないところでしょう。ただ,慎重でもある。その慎重さが,リーグ戦を戦っていく中で意味を持っていくはずだと感じます。