整ってきた研磨体制。

“ゴールデン・エイジ”。


 ちょっと定義の難しい言葉かも,なんて思います。


 さらに言えば,さまざまな条件がそろわないと,なかなかゴールデン・エイジと呼べる才能が出てくることもないかな,と思ったりもします。


 ただ,可能性を持った原石はどの世代であろうとも,間違いなく存在しているはずだとも思っています。その原石を適切に磨くことのできる,そんな体制が大事かな,と感じます。であれば,ゴールデン・エイジが生まれたかどうか,ということよりも,ひとりひとりの子どもたち,彼らが持っている才能を見出し,その才能を適切に引き出し,のばしていく体制を整備しておくことが,クラブにとっては大きな意味を持つように,感じられるのです。


 そんなことを,報知さんの記事をもとに。


 キャッチーな見出しを使っていますから,記者さんは原口選手に注目しているかと思いきや。意外にしっかりと,育成体制について注目されています。


 というわけで,ちょっと緩やかなクラブ論です。


 ごく大ざっぱな言い方をすれば,原口選手のような才能が出てきている,というのは下部組織を構成する各チームの連携がうまくいっている,ということでしょう。そして,各段階によって狙う目標が明確になっていることも。


 目標が明確になっていれば,原石の扱い方にも一貫性が出てくるはずです。


 あくまで,一般論ですけれど。


 コーチング・スタッフが,あまりに理想を明確に持ち「過ぎる」と,かえって原石の個性を失わせるように感じるところがあります。また,ひとつひとつの組織が独立していれば,そしてトーナメントなどの明確な目標がセットされていたとすれば,原石の持つ個性を引き出していく,ということよりも,「結果」へのアプローチを優先させてしまうように思うのです。


 もちろん,勝負事ならば勝つことを求めたいところです。子どもたちに,「勝って楽しむ」ことの大事さを体感してもらうためにも,勝ちに行く姿勢は大事な要素とも言えます。ですが,結果を求めるがためにチームとしての枠組みを強く意識させてしまって,子どもたちが持っている「あったかも知れない個性」を(結果的に,であるとしても)潰してしまったとすれば,長期的にはその育成アプローチは間違っていることになるかも,と思うのです。


 その点を,浦和の下部組織は考慮したのでしょう。2008シーズンの浦和ユースはある意味,長期熟成を経たチームだと評価できますし,確か,エルゴラさんでもそんな評価を受けていたように記憶しています。


 伸康さんが扱った原石たちが,堀さんの手でさらに扱われる。そして,最終的な研磨を,ファースト・チームのコーチング・スタッフが施す。昨季は残念ながら,ファースト・チームが狙わなければならないフットボールをユースが表現していたし,ファースト・チームのフットボールとユースのフットボールとは,ある種の断絶も感じました。そんな状態で,才能の最終的な研磨を任せられたか,と考えれば,ユースからの昇格が2009シーズンであったというのは,ラッキーだったのかも知れません。


 今季は,下部組織にとっての「方向性」となるフットボール,その基盤を構築している段階だと思います。ファースト・チームの表現するフットボールを,ある意味で先取りし,ある意味で踏襲する。浦和にとってのユースは,そんな存在だといいかな,と感じます。そのためには,ファースト・チームとの連携も,もっと深まっていってほしいと思いますし,この観点からも,ファースト・チームが狙うフットボールはブレてはいけない,と思うのです。