2008〜09マイクロソフト・カップ(決勝戦)。
リーグ最終節の印象は覆りませんでした。
ファイナル・スコアだけを取り出せば,確かにロー・スコアです。しかし,得点差から受ける印象とゲームそのものからの印象にはかなりのギャップがあるように感じます。
ということで,いささか時期に遅れた(遅筆堂の屋号に偽りなし,な)楕円球な話です。マイクロソフト・カップ,その決勝戦でありまして,フットボールでは2004シーズンまで採用されていた形,リーグ・チャンピオンを決定するためのゲームであります。
では,“Runner Up”であるワイルドナイツからはじめますと。
端的に。「形」に持ち込む前段階で厳しさに直面してしまったゲームだったかな,と。
ワイルドナイツは,正確なキックを基盤とするエリア・マネージメントからリズムを作り出すスタイルを持っているように思うのですが,ボールをキッカーにいい形で展開することのできた時間帯があまりに少なかった。
ボール・コントロールを,ブレイクダウンで失ってしまうという局面が,かなり多かった印象です。マイ・ボールを引き出そうにも,相手の鋭いタックルからのプレッシャー,ポイントへの素速いアプローチによってボール・コントロールを奪われる。攻撃を仕掛けているはずなのに,早い段階で攻撃リズムが寸断されて,守備に再び意識を振り向けなければならない,という形にばかり持ち込まれていたように受け取れました。
だけでなく,キックの精度もそれほど高いものではありませんでした。
攻撃リズムをコントロールし,同時にエリアを奪う重要な要素として位置付けられるキー・パーソン,トニー・ブラウン選手のコンディションが100%からはほど遠かった,という部分も確かにあったのですが,そもそも彼にボールが渡るような形にはなりにくかったとも言えるのです。
であれば,エリアを奪う武器も機能不全に陥り,その武器にボールを供給する前提も,なかなか機能しなかった。ワイルドナイツの攻撃リズムはどこか,不安定さから逃れられなかったように思います。
対して,ブレイブルーパスですが。
リーグ最終節と並んで,ほぼ主導権を掌握したままのゲームを展開できたのではないでしょうか。
その鍵を握ったのは,やはりブレイクダウンでの鋭さであり,激しさだったと思います。
相手の良さを消し去り,同時に自分たちのリズムをつかむためにはブレイクダウンでの主導権を失うわけにはいかない。ボール・キャリアへのアプローチを的確にすることであり,ボールへの寄せを速めること,を相当強く徹底してきたのだろう,ということがフィールドから受け取れるような,そんな戦い方でした。それだけに,マイ・ボールを失うような局面はかなり少なかったですし,相手ボールを早い段階で奪うこともかなりできていたように思います。
仕掛ける姿勢を貫いていたからこそ,“Champions”という称号を引き寄せたのだろう,と感じる戦いぶりでありました。
・・・虚心坦懐にゲームを見ている,はずもなく。
何とかして,ブレイブルーパスの隙を突けないものか,という視点で見ていましたが。
ボールを展開しているだけでは,恐らくはディフェンスを揺さぶることは不可能。
そんな印象を受けるほどに,ブレイブルーパスの守備は統率されていましたし,「カタマリ」感を感じさせるものでした。最終節で見せ付けられたゲームへの意識,その意識には何らの変わりもなく,かえってその意識にワイルドナイツが押し込まれたところがあったかも知れません。
緊張感のある,いい決勝戦だったと思います。
・・・それにしても。
いささか苦い話が出ております。積極的に触れたい話ではありませんが,触れないわけにもいかないように感じます。つきましては,ちょっと畳ませていただきます。
・・・ちょっと不謹慎な言い方になるのをお許しいただければ。
「勝ち逃げされた」ようにも感じますね。あのチームに敬意を払えばこそ,であります。
誤解のないように,前提を書けば。
クラブ(あえて,プロフェッショナル的な言い方をします)として負うべき責任も,あると思っています。2008〜09シーズンを思えば,ブレイブルーパスは不祥事の印象が強く残っています。オン・ザ・フィールドでの“ディシプリン”ではないけれど,どこかに緩みを感じさせるところは,確かにありました。
中途半端にアマチュアで,中途半端にプロフェッショナル。
ある意味での「端境期」を象徴するかのような隙であり,緩さであるような印象を受けたわけです。
それだけに,クラブとして何らかの対応をとる必要はあるでしょう。そして,クラブが出した結論は,結論として尊重しなくてはならない。
そう思っていますが。
あくまでも責任は個人に帰せられるべきで,ファースト・チームが選手権を辞退する(東芝のリリースから・MSN)必要まではないのではないか,と思っているのも確かです。マイクロソフト・カップでも表現されていたように,いまのブレイブルーパスは「機能的な強さ」を持った,いいチームです。言い換えれば,「倒しがいのある対戦相手」でしょう。
トーナメント・ドローから見て,準決勝で対戦する可能性のあるチームは,ブレイブルーパスとの真っ向勝負を望んでいたはずだし,彼らを倒して決勝のフィールドへと駒を進めたいと思っていたはずです。そして,反対側に位置するチーム,その筆頭は恐らくワイルドナイツでしょうが,彼らは再戦の機会を楽しみにしてもいたでしょう。
今季最強のチームが,たったひとりのために選手権を辞退する。こんな不幸は,ない。
チームにとっても,対戦相手にとっても。
こんな事態は,今回だけにしていただきたいものです。