鈴鹿8耐とホンダ。

鈴鹿パドックから,最強のライバルが姿を消す。


 そのことに寂しさを感じないでもないけれど,強力なコンテンダーまでもがパドックから姿を消すわけではありません。むしろワークスとの関係性が整理されるようにも感じます。


 ヨーロッパのように,専門的なレース屋さんが前面に立つ。それはそれで,悪くない話ではないかな,とも思うのです。


 ということで,今回はフットボールを離れまして,sideriverさん経由ではありますが,ホンダさんのリリースをもとに書いていこうと思います。


 このリリースで最も気になるのは,やはり鈴鹿8耐への参戦体制でしょうか。ヤマハと並んで,ファクトリー・チームが参戦する体勢を崩さなかったのですが,今季はプライベティアへの支援にとどまるのだとか。


 振り返ってみれば,ホンダが持ち込むワークス・マシンは常に,8耐を動かす存在であり続けてきたように思います。RVFであったり,ドゥカティに対抗してVツイン・レーシングを持ち込んだVTRであったり。そして,CBRも同様ですが,レース・ウィークよりもはるか前,準備段階から徹底した作り込みがなされている,という印象があります。
 そして実際に鈴鹿へとマシンを持ち込んでからは,マシンだけでなく,チームとしての「強さ」が印象に残ります。マシンが持っているアドバンテージを上手に生かしながら,戦いを進めていく。レース・オペレーションの緻密さや巧みさは,専門的なレース・オペレータ,あるいは彼ら以上の能力を見せているように感じるところがありました。であれば,ポディウムの中央を狙うプライベティアにとっては,大きな壁であり続けてきたのも確かです。


 つまり,ヨシムラにとって。


 徹底した準備をされてしまえば,ワンチャンスを狙ったギャンブルを仕掛けでもしなければ,HRCからアタマを奪うのは難しい。ギャンブルという言葉からは無縁なレースを展開したHRCに対して,ヨシムラはギャンブルに出た。そのギャンブルの痕跡は,転倒痕という形でマシンに残されてしまう。昨季のレースは,パワー・バランスを冷酷なまでに映し出していたようにも思います。
 そんな「最強の壁」が失われるのだから,いささか寂しいのは確かです。しかし。“ホンダ”のプレゼンスは落ちないだろう,とも思っています。


 ワークス・マシン貸与の対象となっているチームは,ホンダとの関係が非常に深い,しかも8耐優勝経験さえ持っている有力コンテンダーですから,HRCとのマシン開発,熟成に関する協力体制がどのように構築されるかにも左右される要素は大きいですが,少なくともワークスが外れることで戦闘力が急減する,などということはなさそうです。


 何よりも。鈴鹿はホンダにとっての“ホーム・グラウンド”です。そこでのプレゼンスが弱まることを,黙って見ているようなタイプではないでしょう。
 TSRさんだったりHARC−PROさん,そしてモリワキさん。彼らのパフォーマンスが,いままで以上に重要なものとなる。それだけは確かだろう,と思っています。