対イエメン戦(アジアカップ予選)。

テストを兼ねた真剣勝負。


 そんな印象を持ちました。であれば,ちょっと屋号的な表現を使ってみます。


 実験車両的な性格を持ったレーシング・バイクをレース・トラックに持ち込むとしましょうか。そのときに,「動かさないところ」と,「積極的に動かすところ」を明確に分けておかないと,変化を具体的に計測できないはずです。


 では,この試合で「変更しなかった」ところがどこで,「積極的に変更した」ところがどこだったのか。ちょっと見づらかったように思えなくもないですね。


 まいど1日遅れ,のイエメン戦でございます。ごく簡単にまとめてみれば。


 描いているイメージに,不明確さが残る試合だったように思います。


 まずは,リズムでしょうか。


 ごく立ち上がりの時間帯は,かなり指揮官の描くフットボールが明確に表現されていたように思います。その中から先制点を奪取することにも成功しています。いますが,そもそも“オーバーペース”気味に立ち上がってしまったようにも受け取れますし,試合を支配するリズムが単調な印象がありました。立ち上がりにラッシュを仕掛けるのはいいとしても,どこでリズムを落ち着かせるのか。そして,どのタイミングで再び仕掛けを加速させるのか。


 ポゼッションという部分では確かに,「支配」していたと言えるかも知れません。


 ですが,試合をコントロールする,という要素であったり,リズムという部分では必ずしも安定性を見せていたとは言いがたい。ユニットを大きくするという意図を持ってテストをしたのであれば,明確な課題として意識しておくべき部分だろうと感じます。


 また,仕掛けが思うように加速できなかったという部分もあります。


 1トップとセカンド・ストライカーが流動的にポジション・チェンジを繰り返しながら相手守備ブロックを揺さぶりにかかる,などという戦術イメージを持っていたのかも知れませんが,1トップとセカンド・ストライカーとの連携がスムーズではありませんでした。リズムが単調なものとなってしまった要素には,流動性に対する共通意識が持ちきれなかったこともあるように思うのです。


 やはり,チームとして表現するべき戦術,それらをしっかりと理解しているユニットが思うよりも小さめに設定されているのかも知れない,と思わせる試合ではありました。


 ・・・とは言えど。


 テストをしながら,同時に結果を引き出すことにも成功はしました。実戦という負荷がかかった状態で,戦術的な表現ができたところと,できなかったところと。スターター,あるいは戦術交代によってピッチに立ったリザーブにはそれぞれ,つかみ取った「感覚」があるでしょう。ブリーフィングでのイメージでしかなかった「戦術」と,リアルな「戦術」との間にあるものなど。その感覚をもとに,もうひとつの最終予選へと臨んでほしいと思います。