イビツァさん離日によせて。

「代表チーム」というチャプターをもって,最終章にするつもりだったのでしょうか。


 であるならば,書きかけの状態で離日する,とも言えます。ですが,最終章の形が違った姿で提示されることも,またどこかで期待していたりします。
 現在時点でのトップレベルを見ていると同時に,常に将来的なトップレベルを想像している。ならば,将来の姿を具体的に描く,そんなポジションで再びその姿を,と思ってしまうのです。


 日本で書きかけた,最後のチャプター。もういちど,日本で書いてくれるといいな,と思います。


 さまざまなスポーツ・メディアさんで扱われておりますが,ここでは日刊スポーツさんの記事をもとにしながら,イビツァさんのことなど。


 アドバイザリー契約。確かに,何とも中途半端なものでした。


 「どのカテゴリを」中心に見るのか。


 最も重要な部分を,良くも悪くも曖昧にしてしまったな,と思うのです。そのために,現任指揮官との関係を意識する必要も出てしまったし,現任指揮官への信頼を形として表わすためには,という判断の必要性も出てきてしまったように映ります。


 フル代表を念頭に置いたアドバイザリー。


 そう考えると,契約延長を見送るという判断も,あり得べきものだったのかも知れません。ならば,新たな体制への移行期でもある年代別代表,彼らを俯瞰的に見てもらう立場としてイビツァさんの経験を生かしてもらうことはできなかったかな,と思ったりもします。勝負師としての凄みを感じるところも確かにあったけれど,イビツァさんはどこか,先生のような印象です。プロフェッショナルとして,普遍的な要素をごく当然のこととして要求しているに過ぎないな,と感じるところもありました。そんな諸要素を,プロフェッショナルを現実的な視界に捉え始める段階の選手たちに落とし込んでくれたならば。そう思うわけです。
 であれば。
 クラブとして,強固な下部組織を構築したいと考えるところがあるとすれば,イビツァさんの「書きかけ」は,再び日本で書かれることになるかも知れない,などと思ったりもします。


 それ以上に,あの「偏屈オヤジ」が日本にいるという安心感。思う以上に,得がたいものだな,と思ったりもするのです。
 時に「裏読み」しないといけないコメントは,でもフットボールへの愛情をしっかりと持ったものでもありました。そんなコメントを,また聞きたいものです。


 また,いつか。そう遠くない,いつか。


 ダッグアウトで,などという贅沢は言わず。フットボールへの深い愛情を眼の奥に持ちながら,ヒネリを効かせたコメントを繰り出す偏屈オヤジの姿を,スタジアムで見たい。そんな願いを込めて,“Good-bye.”は取っておこう,と思うのです。