1198。

SBKの主役であり続けている,ドゥカティ


 そもそも,水冷を投入した動機からして“レーシング”でした。
 SBKで覇権を握る。


 この目的はかなりの高次元で達成されます。ホンダでさえ,Vツインの活躍に業を煮やし,同じく水冷Vツインを搭載した(とは言え,フレームはアルミ・ツインスパーでありますが)RVTを投入したくらいですから,国産勢にとっては相当な壁であり続けています。


 その壁,再び高くなってしまったかも知れません。



 ということで,今回はサイドリバーさんの記事をもとに,ちょっと屋号な話,であります。


 SBKの主戦兵器でもある,ドゥカティの1098がモデルチェンジ,であります。


 そもそもレーシングな環境をにらんだバイクですので,相当に高性能なのですが,その排気量を車両規定で許されるギリギリにまで引き上げてきたのが,新たにリリースされた1198ということであります。


 この1198,BNR32時代のGT−Rを思い起こさせるものがあります。


 WSBKにおけるドゥカティの活躍は,当然車両規定を変更するにあたって「考慮すべき要素」になったものと思います。排気量こそ,対インライン4比で200ccのアドバンテージを持ってはいますが,反面で改造範囲を相当に抑え込まれているのだとか。ならば,バイクを市販する段階で,改造できない部分に“レーシングな環境”を意識した設計をしてしまおう,と。RB26DETTも車両規則を徹底的に読み込んだ結果として排気量や,各パーツのスペックが決定されていますが,この1198に搭載されている“デスモ・テスタストレッタ”も同じような開発手法を採用しているようです。


 それだけ,ドゥカは本気でSBKを意識している,ということになるでしょう。ただ,レーシングな環境だけを意識していると,とんでもない悍馬にもなりかねません。
 スペックを見ると,この1198cc・Vツインは170psものパワーを発揮していますし,車体重量は(あくまでも乾燥重量ではありますが)171kgに過ぎません。しかも,ひとつのシリンダーが受け持つ排気量は600ccに迫ってもいます。つまり,トラクションに有効なエンジン形態ではあるのですが,ちょっと「程度を超えて」トラクションが掛かってしまう(加速してしまう)とも言えるかな,と。ちょっとラフにスロットルを操作するようなことがあれば,フロントがフワッと浮き上がるだけでなくて,リアが予想外に駆動を失ったりする可能性が高まってしまうのです。


 立ち上がりの鋭さは,ドゥカティの大きな武器であるはずです。でも,その鋭さは引き出しやすい鋭さでなければ,あんまり効果的とは言えません。で,トラクション・コントロールの出番です。


 国産勢を見ていても,このドゥカを見ても,SBKのベースとなるモデルは,さすがに「ちょっと行きすぎ」な感じも持ってしまいます。となれば,“ブチ回す”ことでスポーツ・ライディングするのではなくて,上手にトルクを引き出すことでスポーツする(クルマで言うならば,ディーゼル的な走り方とでも言えるでしょうか),というように,ちょっと工夫していく必要がありそうです。