対横浜FM戦(08−34)。

静的なパッケージが意味を持つのではなくて。


 静的なパッケージを「実質化」するのは,実際にピッチに立っているスターター,あるいは戦術交代で投入されるリザーブ,彼らが持っている


 「戦術的なイメージへの確信の深さ」


ではないかな,と思っています。


 シンプルな約束事程度でも,恐らくはイメージを束ね上げていく大きな鍵になってくれるはずです。そんな約束事が,このシーズンでは失われていました。


 対戦相手は,そのシンプルな約束事を恐らくは徹底することで,シーズン後半の加速態勢を築いてきた。


 約束事を疎かにして,失速しているチームと。約束事を基盤に,加速をかけているチームと。


 屈辱的なファイナル・スコアですし,あまり言いたくはありませんが。それでも,このファイナル・スコアは「妥当なもの」でしょう。


 初期段階から,迷走を抑え込むことのできなかった2008シーズン。そんなシーズンを象徴するかのように,課題ばかりが噴出したゲームだったように感じます。ならば,その課題を真正面から受け止め,ひとつひとつ潰していくことで,この屈辱を雪ぐ以外にない。


 いつものように,1日遅れで横浜FM戦であります。


 3か,それとも4か,などという話の前に。


 今季,ファースト・チームが狙うフットボールの姿を,どれだけ明確に描いていたのでしょうか。


 そもそもポゼッションを基盤とするスタイルなのか,それともカウンターを基盤とするのかさえもが,ピッチから明確に読み取れたゲームは少なかったように思います。であれば,ボールを奪う位置が明確になるはずもありません。


 できるだけ前線に近い位置から仕掛けたい,となれば,中盤でのプレッシングは必然的にボール奪取を意識した厳しいものになるはずだし,ビルドアップを狙うものならば,最終ラインへとボール・ホルダーを的確に追い込んでいくような“チェイシング”とも表現できるようなプレスを仕掛けていくことが求められるはずです。そして,コンパクトさを意識するならば,最終ラインが全体の距離感の中でどのようにコントロールされるべきか,などの約束事も見えていて当然のはずです。


 そんな,「シンプルな約束事」があったようには,(少なくともピッチから感じる限りでは)思えなかったわけです。


 にもかかわらず,静的なパッケージ「だけ」を大きく変更し続けた。


 選手たちが,ひとつひとつのプレーをつなぐ「確信」が得られない状態で,パッケージだけが大きく変更され続けているとすれば,ひとりひとりが持っているイメージが有機的に連動する,ということはあり得ない話だろうし,組織的な仕掛けを繰り出してくる相手に対して,組織的な対応は恐らく難しいでしょう。


 このゲームを,大ざっぱに分割したとして。


 相手は少なくとも,前半にラッシュを掛けたという印象はありません。しっかりとチームが機能している段階ならば,この時間帯での先制点奪取を,と言うべきところですが,そんな時間帯にあっても有機的な仕掛け,という意味では本当に物足りないものがありました。


 自分たちが狙うべき仕掛け,に対して明確な「形」を持てないままにシーズンを経過してしまったがために,大きくスターターが変更を受けてしまうと目指すべきフットボールにまで大きな影響が出てしまう。仕掛けの不安定さは,そのまま守備面での不安定性へと結びつくものでもあるはずです。


 対して後半は,相手がラッシュを仕掛けてくることが想定される時間帯です。実際,仕掛けの強度を強めてもきました。その仕掛けを抑え込むこともできなかった。守備面での不安定性が,スコアという客観要素にしっかりと反映されてしまったような印象です。前線からしっかりとボール・ホルダーを追い込めているわけでもないし,中盤がどういう守備意識を持ってプレッシングを掛けていくのか,その強度も具体的にイメージできない。この状態では,相手の後手を踏む以外にない。


 相手の仕掛けは,ここ数節ある意味徹底していたように映ります。反対側から見てみれば,守備的な部分で迷いがなかった,とも言えるでしょうか。


 どう相手が仕掛けるか(守備を展開するか),読み切れる状態だったにもかかわらず,スカウティングを実際の戦術へと落とし込めないわけですから,大差を付けられたとしても致し方なし,だと思うのです。


 2008シーズン,ともすれば2007シーズンから緩やかに,でも確実に失われていった「戦術的な約束事」,それはオフト時代に意識された「レッズの憲法」と言うべきものかも知れません。この失われたものを取り戻し,ひとりひとりの持っているポテンシャル,パフォーマンスを最大限に引き出せる態勢を再び整備しなければならないし,誰がスターターとしてピッチに立とうとも,揺らぐことのないフットボール・スタイルを作り上げていかなければならないはずです。


 やらなければならないことは,明確に示されている。そのためのロード・マップをどう描くのか。しっかりと見つめていかなければならない,と感じます。