エリア・マネージメント(2008高校ラグビー埼玉県予選・決勝)。

13点差。この点差を僅差と見るか,それとも大きな差と見るか。


 どちらも当てはまるような気がします。


 守備面を取り出すならば,僅差という表現がしっくりくるようにも思えるし,攻撃面を考えるならば,「近鉄花園」を現実的な射程に収めている強豪との厳然たる差が隠れているようにも思えます。


 ただ,同時に。


 この感覚は,決勝戦という舞台へ上がってきたからこそ,皮膚感覚として意識できたものだろう,と思うのです。チームが着実に積み上げてきた実績を,今季はファイナリストという形へと引き上げることに成功しました。そこからさらなるステップへと踏み出すならば,後半に出てきた課題を整理して,さらなる進化を狙ってほしいと思っています。・・・彼らのこと。着実にクリアしてくれると思っていますがね。


 ゲームの話は追ってしようと思いますが,まずは浦和目線で決勝戦の印象を書いておこう,と思います。


 タイトルにも掲げましたが。


 浦和は,“エリア・マネージメント”という部分で深谷の後塵を拝していたように思います。


 後半,浦和は積極的に攻撃を仕掛けていきます。かなり深くにまで仕掛けていく局面もありました。しかし,ここからの「縦」を抑え込まれてしまいます。そのために,ボール・コントロールを失ってしまったわけです。


 そこから深谷が徹底していたのは,フルバックの裏を狙ったキック。仕掛けの分厚さを意識すれば,フルバックは相対的に高い位置を取りたくなります。背後には,スペースが空いている。そのスペースにボールを繰り出し,浦和にボールを「追わせる」戦略を徹底したわけです。もちろん,前提として正確なキックを持っていなければならないし,単純にキックを蹴り出すだけでは意味がありません。キックを仕掛けると同時にポイントを狙ったフリー・ランを仕掛けることで,浦和のバックスに強烈なプレッシャーを掛ける。


 当然,深谷に攻撃を仕掛けるポイントを与えないためには,しっかりと「戻る」ことが求められます。そこで,奪った「エリア」を失ってしまうのです。エリアを失うだけでなく,危険なエリアで相手の仕掛けを受け止め,ボール・コントロールを奪い返すための時間を使うことにもなってしまいます。


 縦を意識した仕掛けは,このゲームでも表現されていました。FWを基盤とする仕掛けには,可能性を感じもしました。ですが,それだけでは強豪との真っ向勝負には足りないということも見えてきました。


 22mから10m,そして5mへ。その先にあるゴール・エリアをどう陥れるのか。


 そのためのアイディアのバリエーションであり,深い確信が求められるようになった,と言うべきでしょう。決勝戦をクリアするための要求レベルは,急激に跳ね上がったようにも感じるかも知れません。知れませんが,チャレンジする価値のある難しい課題でもあるでしょう。浦和にとっての本当の「お楽しみ」(=近鉄花園への切符奪取)は,そう遠くない将来に訪れるかも,などと思っています。