浦和対早大本庄戦(第88回(2008)高校ラグビー埼玉県予選・準決勝)。

総合力で,トーナメントを着実に進んできた。


 必ずしも,圧倒的な攻撃力を持っているわけではありません。今季のトーナメント,そのファイナル・スコアを眺めてみても,攻撃力を前面に押し出したゲーム・プランは組み立ててはいません。
 それだけに,トーナメントを「駆け上がっていく」かのような印象は薄くもあります。
 その代わり,守備的な側面からゲームを見ると,印象は大きく変わります。


 守備的な要素にウェイトを傾けてチーム・ビルディングがされているチーム。この守備的な安定性に,的確なスカウティングが寄与してもいる。そんな印象を持ちます。


 いささか遅れてしまいましたが。高校ラグビー埼玉県予選,その準決勝であります。


 まずは,対戦相手である早大本庄の印象から。


 先手を取られてしまったというのが,ひとつの鍵だったように思います。
 しかも,浦和が「形」としているFW勝負に持ち込まれ,トライを奪取されてしまった。リズムを引き寄せていかなければいけない時間帯で,逆に相手にリズムを譲り渡すような形です。
 そのためか,ボールを展開する中からリズムをつかもうと思っても,相手のタックルにリズムを寸断されてしまう。もったいなかったな,とは思います。
 だからと言って,ラグビー・スタイルを変化させる必要はないだろうと思っています。
 低く鋭いタックルをどう跳ね返し,攻撃リズムをつないでいくか。そんな方向から,さらなるラグビー・スタイルのブラッシュ・アップを望みたいところです。


 さて,浦和です。


 見事に,「形」に引き込んだな,と思います。それだけ,ゲームの入り方がよかったのではないかな,と。


 これまでの浦和を思えば,“チャレンジャー”としての位置付けが多かったと思います。強豪校と表現されるチームに対して,勝負を挑むというように。<
 ですが今季は,Aシードという立場でトーナメントに臨んでいます。ともすれば,相手のモチベーションを「受けて」しまうことにもなりかねません。それでは,本来持っているはずのパフォーマンスを表現できないばかりか,リズムを大幅に崩してしまうこともあり得ます。
 そこで,モチベーション・コントロールを徹底していたように思えるのです。相手を上回るモチベーションを持って,ゲームに入ることを。結果,立ち上がりの時間帯で先制トライを奪取し,自分たちの展開するラグビーに相手を巻き込むことに成功します。
 鋭い守備によってゲームを巧みにコントロールすると同時に,チャンスでは冷静に決めに行く。攻撃的な部分が前面に押し出されたラグビーではありませんが,ディシプリンを感じさせるゲーム運びだな,と思います。


 そんな浦和。決勝戦でどんなラグビーを仕掛けてくれるか,ちょっと想像してみることにします。


 端的に言ってしまって,真正面からの勝負ならば厳しいと言わざるを得ないでしょう。


 総合力で言うならば,恐らくは深谷が上。であれば,真正面からの勝負は避けるほかないだろう,と思っています。
 で,思いますに。
 この準決勝と同じ形に持ち込めるかどうか,が鍵を握りそうです。心理的な部分で後手を踏むことなく,立ち上がりから仕掛けていくこと。言い換えれば,相手に「受ける」姿勢を取らせることができるならば,流れを引き寄せることは可能でしょう。そのためには,先手を打つことが求められるはずです。
 ただ,ここからは違うとも思っています。「奇襲」で相手を抑え込み続けることはできない,と思うのです。
 実力が真正面からぶつかり合う時間帯は,恐らく訪れるはずです。相手は,奪われたリズムを引き寄せ,自分たちのリズムへと戻せるだけのパフォーマンスを持ってもいます。となれば,相手の圧力を抑え込むのは相当に難しくなってしまうはずです。そんな厳しい時間帯に,浦和のストロング・ポイントである“タックル・ディフェンス”を鋭く,しかも正確に仕掛け続けることができるかどうか,が問われるでしょう。エリア・マネージメントなどと言っている場合ではなくて,とにかく1on1で抜かれない,しっかりと倒してボールを止めることを徹底していくことで,相手のリズムを寸断し続けることが,勝負のきっかけになるかな,と思います。


 着実に階段を上がるかのように結果を積み重ね,今季は決勝戦という舞台にまで上がってきた。

 そして,県北エリアの強豪と真正面からの勝負を挑める。
 これ以上の舞台を望むならば,相手を抑え込まなければなりません。相当に高い壁です。ですが,乗り越えられないとは思っていません。と言いますか,同じ年代なのですから「何が起こるか,分からない」と考えるべきでしょう。


 どういう立ち上がりを見せてくれるのか,楽しみです。