熊谷工対早大本庄戦(2008高校ラグビー埼玉県予選・準々決勝)。

仕掛けて,駒を進める。


 確かに,あるべき姿です。


 このカップ戦はあくまでも「通過点」でしかなく,その先にあるトーナメントは仕掛けていかないと乗り越えられない壁が用意されてもいます。
 ただ,勝ち抜いていかなければ「その先」もない。勝ち進むことで,チームに見えてくるものがある,とも思います。しかも,準々決勝や準決勝を経験していない,経験していたとしても回数が圧倒的に少ないチームであれば,その持つ意味はより大きなものになるとも感じます。であれば,リアルを徹底することのできたチームを評価すべきだし,対戦相手であったAシードはそのリアルを打ち破ることができなかった,という見方をすべきなのかも知れない,と思います。


 楕円球であります。高校ラグビー埼玉県予選(準々決勝),その第1ゲームです。


 ファイナル・スコアを見ると,3−3。ノートライ・ゲームであります。


 もちろん,Aシードの熊谷工から見れば,「攻めきれなかった」という部分が大きく映るように思いますが,それだけ早大本庄のディフェンスが集中した状態を維持できていた,とも見ることができるでしょう。
 早大本庄からしてみれば,自分たちが持っている攻撃スタイルを真正面からぶつけることよりも,相手の仕掛けを徹底して抑え込むことで,ワンチャンスを狙う,というゲーム・プランを持っていたのではないか,と思います。そのイメージは,相当程度に描くことができたのではないでしょうか。
 カップ戦だからこそ,のゲームです。ではありますが,両校に「課題」を提示したゲームだとも思います。


 早大本庄は,組織的な守備,その高い安定性を表現しました。その基盤を,どのようにして攻撃的な要素へと結び付けていくか。ゲーム・プランに“ワンチャンスを狙う”という部分があったとすれば,表現され切ってはいなかった要素ということになるでしょう。
 今季のトーナメントに限らず,より高いところを継続的に狙うのであれば,「どう仕掛けのスタイルに,守備的な安定性を結び付けていくか」という部分を考えないわけにはいきません。そのアイディアを作り上げるきっかけにこのゲームがなれば,と思います。


 対する熊谷工は,「揺さぶり方」の工夫が求められた,と思います。主導権,という側面からこのゲームを見るならば,恐らく熊谷工がコントロールしている時間帯が多かったように思います。思いますが,数的優位を構築する前段階での仕掛けが,相手にしっかりと止められてしまったような印象もあります。
 この部分を,どのようにして克服するか。「怖さ」を伴った仕掛けを,どのようにして作り出していくか,とも言えるでしょうか。しばらく遠ざかってしまっている近鉄花園のフィールドに戻るためには,攻撃面での進化が必要不可欠な要素であるように思えます。